生きたい たすけたい ★★★

東日本大震災の大津波気仙沼の公民館に取り残された避難民たちを、ロンドン在住の親族のツイートを見た東京都幹部の指示で救出したという事実(どこまでが事実かは未確認)をドラマ化したNHKの意欲作。脚本は藤本有紀、音楽は梅林茂、VFXは進威雄、演出は佐藤幹夫。ただし、冒頭の数分を見逃したので、再放送でちゃんと観ようかな。

■正直なところ、ドラマとしての起承転結は不十分で、最後にはえらくあっさりと救助ヘリが到着し、ガクッとなるよ。事実がそうにしても、もう一押しないとドラマにならないじゃないか。配役は妙に豪華で、原田美枝子余貴美子がほとんど同格で絡むし、おなじみ青木祟高に高齢者たちとして織本順吉佐々木すみ江、そしてなぜか水野久美まで登場する。そして、東京消防庁に救助指令を出す都庁幹部(副知事らしい)を佐野史郎が演じる。この配役で、津波の惨状を真正面から描きはしないがVFXが絡み、ほとんど東宝特撮パニック映画という印象で、『地震列島』などが非常に近いだろう。

■でも、正直なところ、気仙沼を根こそぎ浚っていった大津波をミクロの視点で描くような作り方も、もうそろそろ解禁していいのではないか。要は『インポッシブル』のような作り方だ。作り手もそのことは十分に理解したうえで、直接の災害描写は避けて、役者たちの表情や梅林茂の十分に不気味な音楽、そしてNHKならではの高音質の地鳴りのする効果音で津波の威力を表現している。でも、と正直感じるのだ。その物足りなさは意外と腰の無い作劇のせいでもあるのだが。

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