ALWAYS 続・三丁目の夕日 ★★★

ALWAYS 続・三丁目の夕日
2007 スコープサイズ 146分
浜大津アーカスシネマ(SC4)
原作■西岸良平 脚本■古沢良太
撮影■柴崎幸三 照明■水野研一
美術■上條安里 音楽■佐藤直紀
VFXディレクター■渋谷紀世子
監督、脚本、VFX山崎貴

 端的に言ってしまえば、あらかじめ心配されたように蛇足としか言いようが無い作品である。吉岡秀隆芥川賞を巡るエピソードなど明らかに厳しいものがある。そんな小説で芥川賞の最終選考に残るはずないだろ!と100万人に突っ込まれること必至である。

 シリーズ随一の憎まれ役が小日向文世というのも、いかにも配役が弱い。後半に向けて、まるで松竹新喜劇のような物語が紡がれてゆくのだが、ラストのカタルシスを支えるには、もっと貫禄のあるベテラン俳優を据えないと説得力が無いのだ。

 また、特に酷いのが小雪の扱いで、前作で意外なほど好演していたのに、今回は見せ場らしい見せ場が無い。また、本作の最大の欠陥は小雪のミュージックホールでの踊りの場面が無いことで、別に小雪のヌードなど見たくは無いのだが、東宝スコープを標榜する東宝映画にダンスシーンが無いというのは明らかに瑕疵といえるだろう。編集次第でいくらでも見せようがあるはずなのに、もし小雪が嫌がったのだとしたら、女優生命に関わる大問題といえるだろう。

 全体にVFXは控えめで、おそらく制作期間の短さが影響しているのだろうが、いっぽうで日本橋の場面についてはVFXにも力が入り、完成度は高い。他方、羽田空港で飛行場の情景をバックに、小日向文世が話すカットなど、背景の映像自体はよく出来ているのに、人物との間の距離感が不自然で、スクリーンプロセスのように見えるのは、演出意図ではあるまい。ラストの東京タワーでのズームバックのカットなども、もっと大きく引いて東京タワーの全景まで見せるのかと思いきや、中途半端にカットするのもよくわからない。

 結局のところいちばんのお楽しみは、冒頭に登場するフルCGのゴジラの勇姿で、ゴジラ自体のデザインと質感は、白組の技術をもってしてもこの程度かというのが正直なところだが、むしろゴジラに蹂躙される東京の町並みの壊れっぷりはなかなか壮観だ。しかも、かなり長い1カットで、崩れ去る建物や、オモチャのように転がる市電といった要素がスペクタクルに合成された場面は、今後の可能性を示唆している。瓦礫の密度に対するこだわりには感動した。

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