怪物 ★★★

怪物 [DVD]
■原作・福田和代、脚本・森下直、音楽・沢田完、監督・落合正幸

■幼女殺人事件の容疑者だった男を執念深く追跡する刑事と、亜臨界水を利用して有機物をDNAレベルで分解する装置を研究する研究員がある事件を契機に出会い、互いの中に潜む怪物性と対峙することになるというかなり複雑なお話で、なかなか簡単にあらすじを紹介できないほど奇怪なお話。ここに、上記の容疑者に幼い頃いたずらされたことのある娘が復讐のために絡んでくるという、やっぱりかなり複雑な話。でも、流石にベテランの森下直の脚本なので、少なくとも話術に混乱は無い。それだけでも凄いことだと思うよ。

■しかし、このドラマの面白さは、空想科学犯罪ドラマとしての骨格にあり、向井理演じる研究員の研究所が古びた洋館だったりすれば、まさに怪奇映画なのだが、そこはそれなりに現代的になっている。でも、疑似科学的な”溶かし魔”向井理がいる一方に、不慮の死を遂げた人間の残した匂いを嗅ぐことができるという”超能力刑事”佐藤浩市が対峙するという、透明人間対火炎人間みたいな無茶な設定を、一応納得できてバカバカしくないレベルに纏め上げた脚本と、妙に快調で痛快な演出の妙味で水準以上の出来。特別出演の栗山千明は常にミニスカート着用で、完全にお色気要員なのだが、流石に落合監督良い趣味ですね。素直にご馳走様です。

要潤の死体が亜臨界水装置の中に吸い込まれる場面で、一瞬眼を開くギョッとする演出なども素晴らしく、落合正幸、流石に信用できる監督だ。

© 1998-2024 まり☆こうじ