エスター ★★★☆

ORPHANT
2009 ヴィスタサイズ 123分
DVD

■近年珍しい純粋無垢なサスペンス映画の痛快作。「悪い種子」という往年の傑作を思い出させるが、こちらの作劇はより平易でシンプルだ。しかし、サスペンスの強度はなかなかのもので、気持ちよく心が映画に吸い込まれてしまう。変に謎を残したり、不必要に複雑化したりする近年にありがちなスリラー映画の風潮のなかで、心洗われる気がするオーソドックスな映画である。

■ラストに明かされる秘密は大方想像がつくわけだが、結論に至るまでのプロセスを楽しむのがサスペンス映画の醍醐味であり、本作は見事な演出と配役でそれを実現した。監督はハウメ・コジェ=セラ(いまはジャウム・コレット=セラですね)という男。ダークキャッスルでは「蝋人形の館」を撮っているが、ゴア演出よりも、普通のドラマを撮ったほうが性に合っているのではないか。また、イザベル・ファーマンという子役の演技は圧巻。

■DVDには例によって別エンディングが収録されているのだが、あきらかに劇場公開版のほうが凡庸な展開になっており、「サンセット大通り」のラストを引用した、というかそのまま援用した幻のラストのほうが含蓄と余韻が強い。なんで急に「サンセット大通り」が登場するのか困惑はするが、エスターの異様な人生のドラマとしての締めくくりとしてはいろいろな想像の余地を観客に植え付ける意味で、感動的なラストといえる。ディレクターズカット版というあり方には根本的な疑問を感じるが、本作はDC版で観てみたかった。

■その昔読んだウィリアム・カッツの傑作サスペンス小説「恐怖の誕生パーティ」とかのサスペンス感を何故か思い出しましたよ。ウィリアム・カッツも既に亡くなったそうですが。

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参考

▼懐かしいわあ。ほぼ忘れられた小説ですが、これはウィリアム・カッツの傑作サスペンスですよ。読みはじめると止められませんよ。全力でお奨めです!

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コレット=セラのサスペンス映画は趣味が良いと思います。
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