五辨の椿 ★★★

五辨の椿
1964 スコープサイズ
BS2録画

原作■山本周五郎 脚本■井手雅人
撮影■川又 昂 照明■三浦 礼
美術■松山 崇、梅田千代夫 音楽■芥川也寸志
監督■野村芳太郎


 病弱の父(加藤嘉)を放って男狂いに走る母(左幸子)を焼き殺して、母の情夫たちに復讐を開始した娘(岩下志麻)だが、最期の標的(岡田英次)にはある秘密があった・・・

 途中でインターミッションが入る堂々たる大作時代劇で、お色気もふんだんに盛り込んだ娯楽作。

 天晴れといいたいほどに醜悪な悪徳モグリ医者を演じる伊藤雄之助が演技の持ち味を全開して、まさに圧巻だし、お得意の小悪党を演じる西村晃も見事。

 ただ、肝心の岩下志麻の演技が未熟で、野村芳太郎の演技指導でがんばってはいるものの、まだ女の色気を十分に発揮できていない。まだ20歳の小娘の役だからやむをえないが、後の「影の車」の、演技の質を押し上げる成熟した女の色香を想起すると、物足りなく感じてしまう。

 牢に入って初めて罪の意識に目覚めて自害するまでを突き詰めて描いたあたりはさすがにおとなの映画だ。

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