俺たちに明日はないッス ★★★☆

俺たちに明日はないッス
2008 ヴィスタサイズ 79分
DVD
原作■さそうあきら 脚本■向井康介
撮影■山崎裕 照明■山本浩資
美術■谷内邦恵
監督■タナダユキ

■無為な高校生3人組の性春の懊悩をヒリヒリするような映像的リアリティで描き出したタナダユキの小品佳作。こういう題材はハリウッドで撮れば、もっとコメディ寄りになるのだろうが、本作は笑うに笑えない切実さで、無為な高校時代を描き出す。

■その痛々しさは、山崎裕の秀逸な撮影に負う所が大きく、まるで70年代の青春映画やロマンポルノのような、フィルムのざらつきを感じさせるルックの構成は、非常にユニークなものだ。ロケ撮影もほとんどノーライトに見える意欲的な映像設計で、手持ちキャメラでぐらぐらすればリアリティと勘違いしているハリウッド映画の風潮を嘲笑う。例えば、埃を巻上げながら走る清掃車の望遠ショットにタイトルが出る巻頭近くのカットの描写力だけでも圧巻だが、海辺の漁師小屋から海辺に至るクライマックスのロケ撮影の凄さも特筆ものだ。

■配役も地味ながら鮮烈で、主役の柄本時生の顔立ちはあまりにやばい。娯楽映画のギリギリラインという風情だが、柄本明の次男というサラブレッドなのだ。いっぽう、こちらも70年代の桃井かおりを髣髴させる存在感がある安藤サクラのふてぶてしさ。これも奥田瑛二の次女という七光り路線だが、大器の予感がある。

■とりあえず、タナダユキは年に1本は撮ってほしいのだが、しばらく新作を見ていないぞ。早く、待望の新作を見せてくれ。

■製作はエキスプレス、竹書房、スローラーナーほか、制作はエキスプレス。


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