ふがいない僕は空を見た
2012 ヴィスタサイズ 142分
DVD
原作■窪美澄 脚本■向井康介
撮影■大塚亮 照明■?
美術■松塚隆史 音楽■かみむら周平
監督■タナダユキ
■セックス映画まつり第4弾。タナダユキの話題作だったが、何しろ長いので見逃して今に至る。この後『四十九日のレシピ』があり、円谷プロで怪奇大作戦も撮り、いま『ロマンス』が公開中だ。
■しかし、今更ながら、タナダユキの映画は素晴らしい。性と生をテーマとした本作も期待に違わぬ佳作だった。主人公の高校生とコスプレ主婦の不倫が両側から描かれるので前半が長くなるのだが、後半に主人公の友人で団地住まいの貧困家庭のエピソードが重層的に描かれ、後半に凄みを増してゆく。いや、タナダユキの貧困描写はホントに心に刺さる。『赤い文化住宅の初子』の衝撃が蘇る。なんでこんなに貧困の心細さが真に迫って描けるのか。
■ここでもスラム化寸前の団地がマージナルな被差別的空間として登場し、古い団地生活の貧困ぶりや周辺の差別意識が描き出される。後半に主役として浮上する窪田正孝がいつもながら素晴らしいし、何気なく登場する三浦貴大の曲者ぶりも凄いし、この二人にまつわるエピソードの切なさはタナダユキ演出の独壇場だろう。このあたりのエピソードの積み重ねは、主人公のドラマには直接関わらないという特異な構成になっているのだが、この後半のリアリティがないと、永山絢斗と田畑智子のエキセントリックなエピソードが浮いたままになっていただろう。田畑智子のプラットホームでの旅立ちの場面もありふれたシチュエーションだが、子供の使い方もホントに上手くて、微かに泣かせる。
■タナダユキ、ホントに上手いので全く何も文句ありません。『四十九日のレシピ』はさすがに地雷ではないかと警戒しているのだが、この調子なら大丈夫そうだなあ。『ロマンス』ってどこでやっているの?
■制作はステアウェイ、製作は東映ビデオ、東映チャンネル、ステアウェイ。文化芸術振興費補助金の助成を受けた。