赤い文化住宅の初子
2007 ヴィスタサイズ 100分
DVD
原作■松田洋子 脚本■タナダユキ
撮影監督■下元哲 照明■?
美術■石毛朗 音楽■豊田道倫
監督■タナダユキ
■誰も教えてくれなかったけれど、傑作です。超低予算(デジタルビデオ撮り)だが、これほどに切ない映画を観たのは実に久しぶりだ。「百万円と苦虫女」で感心したタナダユキという女流監督の前作にあたり、漫画の映画化なのだが、その演出家としての才能には改めて驚かされた。
■広島は福山市あたりの地方都市を舞台に、兄とふたりで極貧のアパート暮らしを続ける中学生の少女のけなげな生き方を綴った青春映画。漫画原作なので、リアリティ志向ではないが、中学生にして人生のどん詰まり感に苛まれる少女を、まるで昭和30年代の日本映画にように貧困生活をテーマとしたドラマに仕上げた異色作であり、正統派の青春映画である。
■しかも「赤毛のアン」を引用して、いわば女の子の憧れの「赤毛のアン」の裏返しとして赤毛ではなく”赤い文化”に住む(というか幽閉されたイメージの)初子を導き出したという発想が秀逸だ。ステロタイプともいえる設定のラストの駅での別れの場面も、見事な幕切れで、エンディングのUAのテーマソングに自然に繋がってゆくあたりの呼吸も、非常に素晴らしい。「ビスケット、食べり」の台詞が切なく突き刺さる。
■大杉漣の登場は少々異質で、雰囲気が急にコメディ寄りに変質してしまうのが残念。これは配役ミスだろうか。全くやる気の無い、というか地元のヤンキーと付き合ったり、酔いつぶれて尻丸出しで寝ていたり、というやさぐれた雰囲気の担任の女教師をなぜか坂井真紀が演じて、ちょっと相米慎二の「台風クラブ」の三浦友和のようだ。というか、さいごまで坂井真紀と気づかなかったよ・・・
■近年、若手の女流監督がやっと増えつつあるようだが、その中でもタナダユキはダントツの存在ではないか。河瀬直美も西川美和もそれほど良いとは思えないのだが、タナダユキには日本映画の正統を託せる気がする。
■製作はトライネットエンタテインメント、ビクターエンタテインメント、スローラーナー。
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