ハプニング ★★★

THE HAPPENING
2008 ヴィスタサイズ 91分
DVD

■おなじみ、常に大どんでん返しを期待されながら、そんなもの短編小説でさんざんやりつくされているので、今更新手なんて思いつくわけないじゃん的な開き直りをヒチコック的なサスペンス演出でそれなりの眩惑感とともに提供し続ける”シャマラン映画”だが、本作も、脚本だけ読んだら歯牙にもかからない、普通ならベテランプロデューサーに散々直しを要求される類の映画だ。単純に脚本だけに注目すれば、B級ホラーサスペンスとしても、随分杜撰だ。でも、嫌いじゃないよ。そこが稚気愛すべき”シャマラン映画”といわれる所以だ。

■「ヴィレッジ」は一応ドラマとして筋が通っていたが、今回はドラマ自体がすっかりあらすじ化しており、夫婦の物語が最低限のところで成立していない。ズーイー・デシャネルとマーク・ウォルバーグの夫婦の関係がどう変化してゆくかというのが、最低限必要なのだが、ここには無い。というか、妻の怪訝な態度といい、友人のジョン・レグイザモの言動といい、なにやら曰くありげに見せながら、結局何も無いという、なんだかよくわからない描写になっているので、困惑するばかりだ。

■今回はなぜか”風”をモチーフとしてサスペンス演出の実験を行っているのだが、映像的に”風”を十分表現できたかといえば、これまた不十分で、全体的にシャマラン演出の神通力の衰えを感じさせる。

■それでも、やはり映画のいでたちはとてもユニークで、シャマラン以外に撮れない作風であることは確かで、おまけにジェームス・ニュートン・ハワードのスコアが幻惑的で秀逸なので、何かありえないものを観てしまったような気にならないでもなく、ついつい騙されてしまうのだ。

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