『アイ、ロボット』

基本情報

アイ、ロボット
(I,ROBOT)
2004/CS
(2004/10/2 TOHOシネマズ高槻/SC2)

参考(旧HPより転載)

 近未来、家庭用新型ロボットNS-5の発売を目前に控えたUSロボティック社で、ロボット工学の第一人者、ラニング博士(J・クロムウェル!)が謎の死を遂げる。刑事(ウィル・スミス)は、博士の死をロボットの仕業と読むが、主任のロボット心理学者(ブリジット・モイナハン)は『ロボット3原則』を掲げ、人間に危害を加える可能性を全面否定する。だが、捜査線上に現われたのは、3原則をプログラムされていない『特別な』ロボットだった。ロボットはUSロボティック社に返還され廃棄処分が決定するが・・・

 「ダーク・シティ」のアレックス・プロヤスが監督なのでビジュアル優先のSFアクションかと思いきや、意外にもオーソドックスな近未来刑事アクションをSF的スペクタクルに仕上げた秀作である。正直、予想以上の出来栄えである。ジェフ・ヴィンターとアキヴァ・ゴールズマンの脚本家チームの貢献が大きいだろう。ツイストの効いた場面展開はアクション映画の醍醐味を満喫させてくれる。 

 もちろん、最新型ロボットのCGによる実写との自然な融合が最大の視覚的スペクタクルなのだが、未来世界のランドスケープについては、さすがに手が込んでおり、見ごたえ十分である。しかも、「ハルク」や「ヴァン・ヘルシング」のジキルとハイドのCGのようにみるからにアニメ的な表現はここでは見られず、ロボットたちのアクションには基本的にモーション・キャプチャーが用いられ、リアルな表現が完成されている。これが、この映画の勘所で、派手なアクションはふんだんにあるが、ロボットの重量感や体の重心の移動をリアルに表現するところに意が尽くされているおかげで、大掛かりなアクション場面も落ち着いて観ていられる。

 いきなり死体で登場のJ・クロムウェルだが、相変わらず見せ場をさらう儲け役が嬉しい。一方、ロボット心理学者のブリジット・モイナハンは、素材の良さを十分に生かしたとは思えず、全く色気が感じられないのは、残念なことだ。ロボット心理学者といいながら、大した働きもしないし。まあ、そのかわり新型ロボットが役者を喰う見事な演技を披露して、ウィル・スミスと堂々と張り合うのだから、監督の演出意図の所在にブレが無いことは確かなのだが。

 誰にでも自信を持ってお勧めできる良作である。ハリウッド映画の良い部分が遺憾なく発揮された、容易には太刀打ちできない大娯楽映画である。

© 1998-2024 まり☆こうじ