『 ダークシティ』

ダーク・シティ
(DARK CITY)

感想(旧HPより転載)

 もう一つの「トゥルーマン・ショウ」と言ってしまっては、身も蓋もないのだが、同じ時期に公開したのは意図的なものだろうか?押井守の「うる星やつらビューティフル・ドリーマー」にもそっくりだし、元ネタを探せばキリがないかもしれない。

 何といっても見所は美術装置とキャメラワークに尽き、クラシックな様式で構築されたダーク・シティのランドスケープには、デジタル処理と古風なミニチュア特撮が混在し、レトロな味わいを強調している。光と水を嫌う、”異邦人”と呼ばれるエイリアンのデザインなど、露骨に「吸血鬼ノスフェラトゥ」そのままであったりするのも、通好みだ。

 また、ドイツ表現主義派の映像様式に忠実な光と影のコントラストの強い映像設計や、場面によって黄色や緑色の色調に統一するという極めて判りやすい色彩設計が、しかしあざとくなくも、くどくもなく、かつあくまでシャープな輪郭を獲得しているのは、「ザ・ファン」や「ダイアルM」の撮影監督ダリウス・ウォルスキーの貢献が極めて大きい。この人のキャメラ及び照明は、本当に色彩と輪郭が鮮明かつ自然で、影の部分が多い場面でも人物には適当な光線が当たって、表情や輪郭が影に沈んでしまうことがない。こうした部分には趣味の問題が大きいが、今回は名手と呼びたい気にさせる仕事だ。

 ただし、アレックス・プロヤスの演出については大いに疑問が残り、物語の展開にリズム感が皆無で、メリハリもなく一本調子で突き進むのは、あるいは脚本の問題でもあろうし、編集の問題でもあるかもしれないが、最終的には監督の采配に問題があるだろう。腰を据えて、じっくりと物語るスタイルのほうが、この世界観には相応しいと思うが。

 ハリウッド方式のマスターショットシステムでの撮影なら、あらゆるアングルからの編集素材がカバーされているはずだから、再編集してリズムを再構築すれば、1.5倍くらいはいい映画になるはずだ。

 キャストでは、親父の若い頃にそっくりの役柄をそっくりに演じる精神科医役のキーファー・サザーランドが楽しい。 

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