池田敏春監督を追悼しなければならない理不尽さについて

池田敏春監督が昨年末に亡くなっていたらしいことを知った。永らく鬱病と戦っていたことも初めて知った。入水自殺の可能性があるとのこと。私にとっては那須博之監督の死去と同じくらいショックな出来事だ。映画監督としての正統的な才能は、正直那須博之よりも、池田敏春のほうが勝っていたと思うし、何よりこの監督は血なまぐさい映画ばかり撮りながら文学的(?)素養が感じられるところが将来性を期待させた。

■Vシネマ時代は結構多作で、竹橋民也名義で脚本のみ手掛けた作品も多く、さすがに全作は観ていないが、「天使のはらわた 赤い淫画」「魔性の香り」「人魚伝説」「くれないものがたり」「MISTY」「鍵」「いきすだま 生霊」「秋深き」など、世間的にはあまり評価されていない映画であっても、池田敏春ならではの”映画的な”というほかない過剰な演出が施されていて、やはり独特の世界観というか、映画観が塗りこまれていたものだ。それを、個人的には、他人事と思われない共感を覚えながら見続けていたのだ。

■本来ならば、京都で本格的な怪談映画を撮るはずの人だったのだが、京都との縁は「くれないものがたり」1本となってしまった。あの映画を観れば、誰しも夢想したはずの本格的な怪談映画は遂に実現せずに終わってしまった。超星神シリーズの監督に登場したときはびっくりしたものだが、川北紘一とはどんな顔をして打ち合わせをしていたのか。

池田敏春が本格的に日本映画に復帰するのはこれからと思っていただけに、突然の訃報はショックでもあり、身を切られるように辛い。世代的には一回り近く上の映画監督なのだが、私の身体と人生の一部分は確実に池田敏春によって形作られており、その隣には那須博之が支えてくれた骨格が根付いているのだ。
■素晴らしくユニークな映画を、ありがとうございました。池田敏春監督。監督の映画は、今も私の生きる糧です。

参考

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傑作『くれないものがたり』がいまは観られないのか。『MISTY』も良かったし、『いきすだま 生霊』も有名漫画の映画化でかなり成功してましたよ。
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もはや伝説の映画。池田敏春の人生と一体化してしまった映画。『人魚伝説』エロくて泣ける。池田敏春、畢生の傑作『天使のはらわた 赤い陰画』これもなかなか良い映画なんですよ。知る人ぞ知る『女囚さそり 殺人予告』

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