『宣戦布告』

基本情報

宣戦布告
2002/VV
(2004/7/18 レンタルDVD)
原作/麻生 幾
脚本/小松與志子、石侍露堂
撮影/阪本善尚 照明/大久保武志
美術/福澤勝広  音楽/礒金俊一、岩渕一真、二本柳一明、米村武
監督/石侍露堂

感想(旧HPより転載)

 韓国の北に位置する某国の潜水艦が敦賀湾に漂着、工作員の一団が敦賀半島に潜入する。政府は警察力による制圧を決定するが、武力行使を封じられたSATは無残な敗北をとげ、内閣に激震が走る。弱腰の首相(古谷一行)の後釜を狙って政争が勃発し、指導力を発揮できない。内閣情報調査室は独自に国内に潜入した北のスパイを内定していたが、北に機密情報を流している人間を特定できないでいた。遂に民間人の犠牲者が出て、首相は自衛隊の防衛出動を決定するが・・・

 東映東京撮影所を使用しているが、東映は直接制作にはタッチしていないポリティカル・フィクションの力作。少なくとも、正体も目的も不明の工作員敦賀半島に潜入した事実を受けて、当惑する内閣の動向を戯画化した部分は、かなりリアルであり、山本薩夫の映画を髣髴させる大人のエンタテイメントになっている。

 自衛隊出動に関する部分では「ガメラ大怪獣空中決戦」でも描かれた日本の国防上の弱点を突いて、当初弱腰だった首相に「この国はまともに喧嘩もできないのか!」と嘆かせてみせる。その主張の成否はともかく、日本の国防上の危機管理の甘さに絞り込んで日本一国の存否だけでなく、世界核戦争の危機にまで発展させる気宇壮大な構想には驚かされる。ただし、風呂敷を広げすぎた後半の失速は無残だが。

 官房長官佐藤慶や政界の黒幕と呼ばれる財津一郎のエピソードなどなかなか痛快だし、夏木マリの女スパイぶりも板についたもので、それなりに大作感のあるキャスティングも楽しい。

 どう考えても超大作ではないが、阪本善尚の流麗なキャメラワークのおかげで予算規模以上の見栄えを手に入れている。DVDの画質も、通常の東映作品のレベルを超えたオーサリングがなされている。ちなみに、座礁した潜水艦の合成カットは、作画合成ではなく、実物大のハリボテをスタジオ撮影して合成しているのだ。他にも、原発の遠景や自衛隊ヘリ、自衛隊の活動状況のロングショットなどに作画合成やCGがふんだんに使用されているが、どうしても貧乏くささは払拭しがたい。

 なお本作は、野球選手と結婚して引退した白島靖代の、今のところ映画での最終作である。一日も早い芸能界復帰を望みたい。(個人的に)

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