■映画自体や、撮影の舞台裏のエピソードも当然豊富だけど、映画会社の経営面についてかなり詳しく書かれているので、助かる。すでに、松本平の『日活昭和青春記』という好著があるけど、労組が経営に関わるようになる経緯も興味深い。経営陣と撮影所との製作方針を巡る綱引きの経緯も非常に興味深くて、あのタイミングでそんなやりとりがあり、映画の企画を左右したとか。ロマンポルノ路線転換を決意した二代目社長、堀雅彦の晩年の零落ぶりも、まことに鬼哭啾啾な残酷物語ですね。
■職人として量産した藤井克彦にも傑作があるよとか、林功だってたまにいいのがあるよとか、著者の推し作品も興味深いな。ロマポ以前だけど、西村昭五郎の『残酷おんな情死』は、助監督の木下喜源に任せて撮ったとか。あれ、わりといい映画だったのだけど、監督が投げた映画だったらしい。そして、曽根中生が難儀な虚言癖の人ということはよくわかった。製作本部長の武田靖については、かなり厳し目ですね。桂千穂は親切に作劇の手ほどきをしてくれたと述懐していたけど。
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■日活ロマンポルノ第一号の『団地妻 昼下がりの情事』は、ピンク映画の『赤線団地夫人』とそっくりとの指摘もあるけど、そもそもほぼ同じお話はザ・ガードマンでも1970年前半頃に「団地奥さん」シリーズで散々やっていて、山浦弘靖が書いているから、まあ当時流行というか、すでに定番のありきたりのストーリーラインだったわけ。ほとんどパブリックドメインみたいなお話で、すでに都市伝説の類だったのかもしれないなあ。多分、週刊誌記事とかがあったのじゃないか?
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■ちなみに、にっかつは給与の遅配を出しながらも、倒産間際まで新規採用を行っていて、演出助手とか美術助手を採用していた。1986年くらいの新規採用助監督も紹介があるけど、もちろんその後監督にはなれていないはずで、彼らは、どこに散っていったのだろうか。

