基本情報
パレンバン奇襲作戦 ★★★
1963 スコープサイズ 95分 @アマプラ
企画:秋田亨、加茂秀男 脚本:棚田吾郎 撮影:星島一郎 照明:神谷与一 美術:田辺達 音楽:木下忠司 特撮:矢島信男 監督:小林恒夫
感想
■太平洋戦争緒戦の頃、パレンバン降下作戦の直前に、オランダ軍が精油所を破壊しないように、事前に潜入して自爆装置を破壊するという自己申告ミッションに賭ける男たちを描いた戦争活劇。「空の神兵」として有名な、あの雄大な大作戦はクライマックスに登場する。でも、その大作戦の露払いの作戦で死んでいった名も無い者たちを描く、珍しい素材。当然、フィクションだけど、目の付け所が絶妙。
■決死作戦に無理やり巻き込まれる元石油技師の南方浪人が丹波哲郎で、ドジっ子の丹波氏が観られる珍しい映画でもある。軍人は嫌いだといっていた彼が、最終的には中隊長(江原真二郎)に代わって英雄的に死んでゆく。定石だけど、悪くない。ドジっ子がヒーローに成長してゆくお話でもある。丹波哲郎の、堂々主演作なのだ。
■特に自衛隊全面協力(だよね?)の戦車とか飛行機の実物に、インドネシア独立の機運を絡めて、日本、オランダ、インドネシアの関係性を結構真面目に描いたところが貴重で、オランダは単なる適役で、兵士はやけに弱いけど、大東亜共栄圏の夢想を相対化する視点は良いと思う。棚田吾郎は『陸軍残虐物語』で軍隊の内実をえげつなく描いたけど、本作ではもっとソフトで、でもいくつか良い場面がある。
■インドネシアとオランダの混血の石油技師が岡田真澄で、故郷なき男のその苦悩が描かれるのもいいし、決死隊が隠れ家とする教会の気丈な修道女をなんとフランソワーズ・モレシャン(!)が演じて、これが妙に出色の存在感。もちろん複雑な演技はないけど、何しろ見た目だけなら、オードリー・ヘプバーンにだって喧嘩売れるレベルだ!(言い過ぎ?)英語が母語なので、オランダ人ではなくて、たぶん英国人だろう。岡田真澄を匿い、決死隊に哀れみをかける良い役、儲け役だ。インドネシア人は民族の独立は上から与えられるものではないと主張するし、修道女はどちらが正しいとかの問題じゃなくて、神は戦争を憎むと言ったり、登場人物それぞれの視点から、この戦争がどう見えるかを端的に述べたところは、結構珍しいケースだと思うし、棚田吾郎のいい仕事だと思う。少なくとも、ステロタイプな戦記物ではない。
■俺に故郷はないと言い放つ岡田真澄に、ちがう、君の故郷はあの製油所じゃないか、その故郷がいまオランダ軍に破壊されようとしているんだ、それを君は、黙って傍観していていいのか?と丹波節で問いかける場面は、最終的に岡田真澄のとる行動に反映していて、実はなかなか泣かせる良いエピソードになっているのだけど、もっと丁寧に演出すればいいのに。大仕掛けな映画なので、いろいろ段取りとかスケジュールとか厳しかったろうけど、勿体ない。活劇場面はかなり間延びしているし、サスペンスも効いてないし、これが深作欣二なら。。。
■矢島信男の特撮も意外なほど大掛かりで、自衛隊の協力とあわせて、結構な大作だったようだ。モノクロ、ノースターで、経費を削減したのだろうけど、佐藤慶や須賀不二男がちょい役で出るし、そこはさすがに東映だなあ。佐藤慶はまだしも、須賀不二男は誰かわからんレベルの脇役で、編集でカットされたんじゃないか?航空機のミニチュア特撮は相当に大掛かりで、ボリュームもたっぷり。ミニチュアが空中で制止して見えるカットがいくつかあって気になるけど、ミニチュアが大きすぎて、操演担当も動かしようがなかったのかな。大きな飛行機のミニチュアは、結構、撮り方が難しいのだな。
参考
小林恒夫はちゃんと堅実ないい映画を撮っているのだ。後に『マイティ・ジャック』も撮ったけど。
maricozy.hatenablog.jp
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通だけが知っている?棚田吾郎のええ仕事。日本映画史に残る仕事。のはず。
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