レッド・ドーン ★★★☆

Red Dawn
2012 スコープサイズ 93分
APV

■中国が米国本土に攻め入るというお話で撮ってたら、クレームがついて適役を北朝鮮に変更し、そのために大量のCG制作作業が発生したという伝説の大コケ映画。そもそも中国で公開するつもりもないからそんな映画撮ってたんだろうけど、さすがにハリウッドは中国に背を向け続ける勇気は無かったわけだ。そうした製作陣の腰抜けな態度もあって、興行的にも批評的にもボロカスの映画だが、単純に予告編が面白そうだったので恐る恐る観てみたよ。

■ところがどっこい、これはアクション映画の快作。脚本も全然悪くないし、アクション監督出身のダン・ブラッドリーの演出も相当拘っている。そもそもデジタル撮影ではなくフィルム撮影を選択し、大規模な市街戦などもCGではなく現物主義で撮っている。冒頭の落下傘部隊などはわかりやすくCGだけど、派手な爆発やクラッシュシーンなども基本的にフィジカル・エフェクトで撮っているようだ。その現物主義は映像にちゃんと生きているし、アクションの繋がりもわかりやすい編集で、北朝鮮の占領軍に対するゲリラ戦を小気味よく見せてゆく。もちろん、北朝鮮軍が弱すぎるのだが、活劇映画はそれでないと盛り上がらない。

クリス・ヘムズワースとジョシュ・ペックの兄弟の物語で、実質的な主役はジョシュ・ペックなのだが、この男優が本作の不評の主な原因だろう。本国でも散々な評判のようだ。実際、実年齢は若くて痩せているのに顔のパーツがすべて垂れ下がり気味で、声まで擦れているという、観ていて心配になってくるほど不健康そうな見栄えなんだけど、なんでこの人連れてきたのかね。いっそのこと、この人をCGで他の元気そうな若手俳優に置き換えればよかったのに。

■電磁パルス攻撃で情報通信網を一網打尽にして攻め込むとか、ベトナムイラクで米軍が経験したゲリラ戦を裏返えして北朝鮮軍を翻弄したり、必要最小限の工夫はしてあると思うし、何より活劇映画の見せ場が粒ぞろいで素直に燃える。奴らにとってここは占領地のひとつだが、俺たちにとっては故郷だ。だから勝ち目はある・・・という名演説を定石どおりに繰り返して見せる語り口も頼もしいと思うが、最近こういうのって流行らないのかなあ。かなり上出来なアクション映画だと思うがなあ。


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