未開の秘境なら俺たちだって王様になれっかもよ!『王になろうとした男』

基本情報

The Man Who Would Be King ★★★☆
1975 スコープサイズ 129分 @NHKBS

感想

■英国の退役軍人コンビ(マイケル・ケインショーン・コネリー)が秘境カフィリスタン(架空)に辿り着き、軍事指導しながら、王になろうと企むが。。。

キプリング原作の秘境冒険小説で、頭とおしりで回想をサンドイッチした構成がきいていて、リアルな話ではなく、あくまで夢物語=ロマンとして物語る。一種の怪奇小説的なムードも醸し出して、そこが捨てがたい味になっている。形式的には『マタンゴ』と一緒だ。周辺の蛮族を英国流の軍事技術で制圧して、まんまと王に上り詰めたが、紀元前にその地を征服したアレキサンダー大王の息子と崇められてその気になったことから、歯車が狂い始める。

■政治哲学的な寓話にもなりそうなテーマ設定だけど、むしろ秘境ロマンとか、青春の(?)夢の挫折というところに着地している。神と崇められるけど、結婚式で血を流してしまったために、王座を追われることになる。そもそも王様とはなにか、王様の権威はどこからくるのか?そのあたりを深堀りすると哲学的なお話になるけど、あくまで冒険譚として描く。これが60年代なら堂々たる3時間映画になったろうが、さすがに1975年では許されない。

■秘境ムードあふれるロケ撮影がなんといっても豪勢で、一部にミニチュア撮影や作画合成(名人、アルバート・ウィットロック)もあるけど、基本的に現地で一発撮り。もちろんインドとかアフガンロケではなく、モロッコで撮影されている。モロッコて、こうした歴史があって、リドリー・スコットもお気に入りの、アフリカのハリウッドだね。確実にスピルバーグにも影響を及ぼしているね。インディージョーンズ

ショーン・コネリーマイケル・ケインが楽しげにノリノリで演じている様が気持ちよくて、そもそも何か政治的な理想があるわけでもなく、秘境の野蛮人ならおれたちの言う事聞くんじゃないの?という英国人の傲慢さから出た冒険話で、その意味では深みはない。でも、人間関係の基礎にフリーメイソンが置かれているのが異色で、これだけ正面からフリーメイソンを扱った映画も珍しいのではないか。というか、フリーメイソンと言われてもポカーン?の日本人にとっては解釈が追いつかないから、普遍性に欠けることになったと思う。ジョン・ヒューストンフリーメイソンだったのかなあ?


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