『宇宙猿人ゴリ』雑感&名怪獣礼賛:恐怖の黒いおにぎり?ネズバートンはネズバードンじゃないよ!

■『宇宙猿人ゴリ』から「恐怖のネズバートン」「怪獣列車を阻止せよ!!」(脚本:辻真先 監督:土屋啓之助)を随分久しぶりに観ましたけど、やっぱり容易に形容しがたい変な味がいっぱい染み込んでいて、感慨深いなあ。

■とにかくネズバートンの魅力一発。ちなみにネズバードンじゃなくて、ネズバートンなのだ。今まで勘違いしていた。本放送のときに観ていて、とにかく怖いのが強烈な印象だったけど、じっさい怖いですよ。特に前編の農家の土蔵に取り付くように存在する黒い塊の描写は鮮烈に怖い。完全に猟奇と怪奇の世界で、農家のミニチュアから頭一つくらい大きいリアルなサイズ感の怖さ。このあたりはミニチュアも大きいし、特撮演出も意外に丁寧に撮られている。

■一方で、後編ではそのサイズ感の扱いに苦慮したようで、脚本ではネズバートンはラーの操縦する蒸気機関車に乗って都市を目指すはずが、そんなに大きなミニチュアは用意できないので、機関車の後をなんとなく付いて飛ぶような妙な演出になっていて、正直なところシーンとカットのつながりがよく分からない。このあたりは一峰大二の漫画版が秀逸なので、見劣りするなあ。それに戦闘シーンは効率重視のルーズな長廻しスタイルで、ぬいぐるみに燃え移った火をスペクトルマンが親切に消してやるアクシデントもそのまま残っている。前編に比べると、明らかにやる気のない演出ぶり。そもそも、誰が特撮監督なのか、クレジットすらないからね。的場徹なのか、助監督の堺武夫なのか。

■でも、ネズバートンのデザイン、造形、生態描写は見事なもので、二つの頭を切られてもすぐに再生するし、でも二回切られるともう再生しないとか。足から血を流し、びっこを引きながらスペクトルマンに迫るとか。とても飛べそうにないか細い羽根で羽ばたいて、ぴょんぴょん跳ねながら戦う殺陣とか。もうアイディア満載で魅力いっぱい。おまけに体はほぼおにぎり型ですからね。黒いおにぎり。広げた羽根が貧弱なのが、逆に禍々しくて、意想外の効果をもたらした。

■このあたりのエピソードをメインにして、映画版『スペクトルマン』(あるいは映画版『宇宙猿人ゴリ』)を作って欲しいところですが、たぶん庵野秀明あたりが狙ってる気がするなあ。ピープロの版権管理してるらしいし。

■ちなみに、「置き物」とも揶揄されるけど、小野善次郎が造形した第1話のヘドロン(ほぼイソギンチャクだけど)も大好きなので、これもリブートしてほしいなあ。1話の特撮は、極端に低予算だし、石油コンビナートとか当然再現できないのに、意外と手堅い演出で悪くないのだ。

補足(お得情報)

■手元の脚本(たぶん決定稿)では「恐怖のモルモット・ゾーン」「怪獣列車を阻止せよ」となっていて、怪獣の名前も「マウスバード」となっている。

■後編は怪獣がD51の貨物車両に乗って、トンネルをくぐって都市に向かうという展開で、漫画版が忠実に再現している。つまり、怪獣のサイズ感はせいぜい数メートル?それでもトンネルはよほど平べったくならないと、入れないよなあ。

■それに、倉田室長はほぼ確実に蒲生譲二の正体に気づいている話になっているけど、完成版はオミットしてボカシている。

参考

撮影の柿田勇は日活映画出身で、わりといい映画を撮っているのだ。姫田真佐久と同期らしいよ。
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp
maricozy.hatenablog.jp

© 1998-2024 まり☆こうじ