感想
■アウシュビッツの強制収容所の隣にのどかな庭園と居宅を構えて、壁の向こうから不穏な物音が聞こえてくるなか、淡々と日常生活をおくるヘス所長一家だが、昇進を伴う転任を命じられると、妻は愛着のある屋敷に執着する。。。
■という、舞台設定一発勝負の異色作だけど、正直なところドラマが弱いので、途中から眠くなる。映像スタイルはまるで昔のATG映画のようで、特に音響効果は鮮烈なのだけど、求心力が持続しないし、何がいいたいのかはっきりしない。まあタイトルどおりのテーマではあるけど、ホントにそれ以上の含意が探れないから、退屈してしまうのだ。正直、もっと普通にドラマを組んだほうが効果的だと思うがなあ。不快感や違和感だけは積み上がるけど、その行く先を明確にしてほしいところだ。でないと劇的カタルシスがないからだ。劇的カタルシスを狙わないなら、ドキュメンタリーでいいのだ。
■普通にオーソドックスな家庭ドラマを組み上げて、壁の向こうに隠された非人間的な営みとシンプルに対比すればテーマは伝わるはずだし、その方がコントラストが際立つと思うけど、おそらく既に『縞模様のパジャマの少年』があるので、オーソドックスなアプローチは避けたのだろう。ほとんど同じになってしまうから。アプローチの手法はユニークだけど、無理矢理なことをしていて、演出が浮いていると感じる。二番煎じを避けるための試みだろうけど、苦しさが際立ってみえる。