#15週「愛する力」(演出:田中健二)
■パンパンに成り果てた奈津を救えるのは、彼女が唯一こころを開く、安岡のおばちゃんだけや!(「ゴジラを倒せるのは、キングシーサーだけじゃ!」の今福正雄のイントネーションで!)糸子は永らく臥せっている安岡のおばちゃんに頭を下げる。復活した安岡のおばちゃんは奈津のもとを訪れ、一緒に店で働こうと誘う。一方、臨時の紳士服づくりの職人としてやってきた周防(綾野剛)は、仕事を終えると店を去るが、糸子はあぶなく好きになりそうやったと心を撫で下ろす。#16週「揺れる心」(演出:安達もじり)
■ガラの悪い北村社長(ほっしゃん。)の工場の指導をすることになった糸子だが、工場長に周防が着任すると、心がざわめく。店の開店の日、一張羅で身を固めた糸子は心情を告白すると、周防の気持ちも一緒だった。#17週「隠しきれない恋」(演出:福岡利武)
■昭和23年、周防を自分の店に引き取った糸子はほっこりするが、北村の讒言や、ご近所さんから誹謗中傷を浴びると、親族会議が開かれ、それでもわたしは周防と仕事をすると宣言すると、子らも母に同意する。だが、糸子は周防のために紳士服店を作り、店を売り渡すと、別れを告げる。#18週「ライバル」(演出:田中健二)
■昭和29年、新たな出発を意識した糸子だが、長女(新山千春)が東京の洋裁学校に行くことを決めると、次女(川崎亜沙美)は激しく対抗心を燃やす。長女の師である原口から絵の才能を認められた次女も東京へ行くことを決める。#19週「自信」(演出:安達もじり)
■昭和32年、ついに次女も東京の洋裁学校に進学する。糸子は安く買い取った生地で北村と既製品の新商品を企画するが、モードに乗り遅れて失敗する。既に時代の流行とずれていることを認識するのだった。一方、次女はオリジナルデザインの奇抜な衣装で帰郷する。店を継ぐ覚悟だった長女は、次女のデザイン賞受賞に嫉妬する。#20「あなたを守りたい」(演出:松川博敬)
■北村は詐欺で逮捕され、長女の結婚式に出る、出ないでとんだ茶番劇を演じる。昭和36年、大きな賞をとった次女は東京に店を出すが、商売が行き詰まると、長女は東京へ向かう。そして、のほほんとテニスに打ち込んでいた三女(安田美沙子)は、姉たちの姿をみて、ついに洋装に進む意思を固める。雑感
■なんといっても、安岡のおばちゃんをどう復活させるのかが作劇上の大問題で、安易なことはできないし、どこまで具体的に描くのか、勘助の戦場で経験したつらい体験を間接的に語るのか、そうしないのか、論点はいろいろあるところを、さすがに見事な描きっぷりで、圧巻の見せ場だった。なにしろ、濱田マリからあれだけの演技を引き出した田中健二の腕は凄いものがある。それも、スケジュール的にタイトな朝ドラですよ。いま放送中の『燕は戻ってこない』も女優の演技がみな圧巻なので、独特のセンスを持っている演出家のようだけど、すでに本作でもその才能が開花して、えらいことになっている。濱田マリの臥せった顔の表情の怖さだけで、彼女を押しつぶしている不幸の重みや、それがいかに人間を潰すのかを一瞬で理解させる凄い演出と撮影。完全に映画並みのクオリティです。
■北村と糸子の掛け合いは完全に夫婦漫才のいきで、そのガラの悪さが実にリアル。幼馴染で弟分的な勘助は死んでしまったけど、その代わりに新たな弟分が登場した感じだ。ただ、その弟分はイケイケでえらくガラが悪いのだ。糸子は若い頃は女侠てかんじだったけど、そのうち女社長あるいは女親分になり、その後ガラの悪さに磨きがかかって、見事な泉州女っぷり。いや、実際に岸和田女子があんなかどうかは知りませんけどね。でも凄い実在感。
■北村は実質的に糸子の家に出入りする唯一の男衆で、なにかというと糸子の家に来ると、おばあちゃん(麻生祐未)が喜んで誘うので、上がり込んで絶好調で飲み食いして帰るという、半分家族あるいは親類みたいな立ち位置。父も夫も神戸の祖父母も亡くなって、糸子の家では男手が寂しいところに、付け込んだわけではないけど、ありがたく乗っかって、いい気分で居座る。糸子に気があるのに、完全に舐められていて、相手にされない。でも、父のいない三姉妹には妙に懐かれて、やっぱり嬉しがっている。微妙にええ塩梅の人間関係。次女直子は川崎亜沙美という人が演じて、なかなかの飛び道具だけど、見事な存在感だし、まあ演出が良いんでしょうね。最初は、えらい老けた14歳だなあ、ですけどね。
■絶縁していた安岡のおばちゃんの復活劇があり、たぶん人生で初の恋だった周防との不倫を精算して、18週以降は娘たちの急成長と自立の課程が描かれる。そのため、ドラマ的にはちょっと散漫な感じにあるのは仕方ないなあ。糸子の比重が当然後退する。
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