縞模様のパジャマの少年 ★★★☆

THE BOY IN THE STRIPED PYJAMAS
2008 ヴィスタサイズ 95分
DVD

ユダヤ人強制収用所の所長の8歳の息子が農場と勘違いして収容所の少年と仲良くなるが・・・というお話で、決してノンフィクションではない。

■8歳の少年の視点を丁寧にたどって、やがてホロコーストの実態に肉薄するまでを、非常に丁寧に、かつてきぱきした編集で描く見ごたえのある良心作で、主役の少年の演技も素晴らしいし、久しぶりにジェームズ・ホーナーの、これぞ映画音楽というスコアをたっぷり聞けるのも非常に嬉しい。

■少年の母親で、夫の仕事の実態を徐々に知って憔悴してゆく役をヴェラ・ファーミガが演じていて、彼女独特の鼻にかかった色っぽい美声が聞けるのも見所。

■ラストショットの脱ぎ捨てられ服は、すぐさまスピルバーグの「宇宙戦争」でトライポッドに人間が消滅させられた後に残る衣服を連想させる。あの衣服は、まさに”魂魄この世に留まりて”という状態なのだ。

■しかし、終幕の作劇には今ひとつ説得力を感じなかった。家族たちが探しに走るというカットバックも、どうも類型的な演出で、せっかく積み上げてきたものが正確なところに着地していない気がする。両親たちは何も気づかないままとするとか、もっとずしんと肺腑を抉る決着の仕方があったはずだがなあ。事実であればそのままでいいのだろうが、フィクションなので、一工夫足りない気がしてしまうのだ。

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