基本情報
オーバー・フェンス ★★★
2016 ヴィスタサイズ 116分 @アマプラ
原作:佐藤泰志 脚本:高田亮 撮影:近藤龍人 照明:藤井勇 美術:井上心平 音楽:田中拓人 VFXプロデューサー:浅野秀二 監督:山下敦弘
感想
■結婚生活が破綻して故郷の函館で職業訓練学校に通いながらも無為な日々を過ごす男(オダギリジョー)は、エキセントリックなホステスの女(蒼井優)と出逢い、はじめは警戒するが、喧嘩別れすると、何故か気にかかり。。。
■「フェンス」なんていうから、在日米軍のフェンスがどうしたの?とか思ってしまうのは、監督が以前に『マイ・バック・ページ』を撮っていたからですね。閑話休題。
■東京テアトル70周年記念作品なので、とても地味な小さな映画なのにオールスターの配役で、そこは非常に豪華な映画になっているし、『海炭市叙景』『そこのみにて光輝く』の前二作に比べると、案外わかりやすく飲み込みやすいドラマになっている。オダギリジョーは脇役で変な役ばかりやってる印象だけど、ちゃんと主役で真面目に取り組んでしかるべき貫禄を見せる。
■蒼井優はもちろん実力派なのでなんの心配もないけど、なにしろかなり「ぶっ壊れた女」なので、さじ加減が難しいところ。鳥の求愛行動を真似て踊りだすという趣向は映画のオリジナルらしいけど、よく考えたね。大成功。『溺れるナイフ』の舞踏シーンの寒々しさと比べてみるとその違いがよく分かる。
■割れ鍋に綴じ蓋という言葉があるように、男女は単独では欠けたもの同士だが、一つになって初めて完成する器なのだ(爺か!)。ぶっ壊れた女と、妻を壊してしまった男が出逢うことで、自分の意識や認識を超えたところで、というか意識の下で引き合うことになる。それが悲劇で終わらないところがこの映画の優しさだし、東京テアトル70周年という記念映画にふさわしいところだろう。
■その祝福のために、松田翔太、北村有起哉、満島真之介、優香、安藤玉恵らが結集したわけ。松田翔太なんて、完全にオダジョーにゾッコンで、一緒にクラブを経営しようとか誘いながら、実は違う誘いをかけていたのだ。自分も寝た女をオダジョーに充てがって、義兄弟の盃のつもりだったけど、オダジョーが本気で女に惚れると失望(失恋?)してしまう。
■しかし、山下敦弘って、すっかり安定感のあるベテラン監督になったんだなあ。最近のメジャーな二作を観ても、ソツがないしなあ。