基本情報
木枯し紋次郎 関わりござんせん ★★
1972 スコープサイズ 90分 @DVD
企画:俊藤浩滋、日下部五朗 原作:笹沢左保 脚本:野上龍雄 撮影:わし尾元也 照明:中山治雄 美術:吉村晟 音楽:津島利章 監督:中島貞夫
感想
■紋次郎(菅原文太)を崇拝する無宿人(田中邦衛)が紋次郎にあてがった宿場女郎(市原悦子)は、紋次郎を間引きの宿命から救ってくれた生き別れの姉だった。。。
■野上龍雄が笹沢左保の原作から離れてオリジナルで作劇した、東映の紋次郎シリーズ第二弾。原作ものではないので、ミステリーとしてのひねりはなくて、ある意味オーソドックスな股旅モノになっているけど、実は残念作。
■紋次郎が実の姉と再開するが、姉は宿場女郎になっていて、、、というメインアイディアの展開としてはいささか不十分で、紋次郎の記憶のなかの理想化された姉と現実の自堕落な女郎生活との落差の激しさにドラマ性を求めるのかと思いきや、そうでもなくて、汚れてしまった姉が弟との再会でかつての純な気持ちを思い出すとか、いうわけでもなく、単純に姉の愚かさが目立ち、そこに作者の悪意さえ感じる。
■あたしはあの有名な紋次郎の姉だよ!お前たちとは違うんだよ、なんて言い出す俗物で、当然のように悪い役やくざの悪巧みに簡単に利用されて、用が済むとあっさりと斬り殺されるから、実にもったいない限り。もっとドラマを掘り下げるべきところを!
■紋次郎が理想化していた姉の幻が幻滅するという残酷さを描くのかと予想していたけど、そうでもなくて、愚かな女だけど自分には命の恩人だから姉のために戦わなければならない、でも正直幻滅しか残らなかったぜ、浮世の柵は煩わしいよね、という描き方になっているので、そこは原作を踏襲している気もするけど、ドラマとしての肝とか正念場(@マキノ光雄)の在り処が不明確。原作小説は意外な真犯人とか、プロットにひねりがあるのである意味明快なんだけど。そのあっさりした描きかたからすると、あくまでシリーズモノのフォーマット固めの段階なので、フォーマット優先ですよという雰囲気でもある。
■中村英子という女優がポスト藤純子として新人デビューしているけど、田中邦衛の馴染みの宿場女郎役で、特別にスポットライトを当てましたという演出ぶりでもないし、扱いが中途半端。しかも、山口組三代目組長の長男と結婚して早々に引退、1年後に若くして自殺しているという幸薄い謎の人。
■わざわざ市原悦子を呼んできたけど、演技的に特筆すべきところもなく、汐路章は期待通りに悪巧みしてくれるけど、大映倒産後の伊達三郎も顔見世程度の役でもったいないし、まあ、全般にパッとしない凡作。TV版のような新機軸もないので、これでは続かないわな。