あらすじ
■学習院大学の学生桂(吉永小百合)は遅ればせながら出版社志望で就活を行うが、父親がいないため門前払い。なんとかコネで潜り込んだ女性週刊誌では悲惨な山岳遭難事件の取材方針を巡って新任編集長(高橋悦史)と激しく対立する。大学の同級生で活動家の川瀬(浜田光夫)が一番の相談相手だったが、困った時に彼はいない。。。
感想
■われわれの年代だと「天国にいちばん近い島」の人という印象の森村桂の女性大生時代のデビュー作「違っているかしら」を映画化したもの。原作小説は当時大ヒットしたらしいけど、さすがに知らないわ。
■吉永小百合もそろそろお年頃なので女学生から社会人路線へ転換しつつある頃、なかなか意欲作だし、出来はかなりいい映画なのだが、最終的に吉永小百合の歌う主題歌で回収するというところに当時の吉永小百合の伸び悩みの一因をみる気分だ。小百合の父はこのフォーマットを喜んで執着があったので、後年自己資金で『野麦峠』の映画化を企画した際に混乱を招くことになる。
■本作は著者の実体験をベースにしていて、女性週刊誌で扱う事件が山岳遭難事件で、すでに数日経過で亡くなっているけど、遺体がザイルで宙吊りになっているので、自衛隊がザイルを射撃して回収しようとしたけど、谷あいに落ち込んで回収できないとか、かなりシリアスなもの。むしろこの事件をドキュメンタルに社会派映画にしたほうが良いものができると思うけど、ここだけ妙にリアルで見応えがある。もちろん、大規模ロケはないので、間接的な描き方になるけど、関係者や家族の焦燥感は伝わるし、取材方針をめぐって記者としての倫理感にも触れる。それに小百合とコンビの山本陽子が意外に好演していて、小百合と並ぶと山本陽子の線の細い綺麗さが際立つ。ただ、このエピソードは最終的に投げ出されるので惜しいけど。
■小百合の支えになるのが浜田光夫演じる左翼学生で、このエピソードも悪くないし、浜田光夫の好演は安定感がある。対して、孤児院を飛び出したゴロ(市川好郎)が雑草のような生命力で世渡りをしている様に触発されるというエピソードが対置され、最終的にはだから私もなんとかなるはず!と街に飛び出すけど、さすがに高度成長期ですね!
■主人公は憧れの出版社で失敗を繰り返して、理解者である社長も庇いきれず、強力なコネも無駄にするし、正直まずは反省したほうが良いと思いますよ。そのガチャガチャした勢いだけで突っ走っていても、いろいろ難しいと思いますよ、と説教じゃなくて、アドバイスしたくなってきますね。
参考
↓吉永小百合のお仕事映画路線。実は良いシーンがいくつもあるので、忘れがたい。
maricozy.hatenablog.jp
↓この映画は意外と良作でした。吉永小百合のこの時期の代表作だと思います。
maricozy.hatenablog.jp
↓吉永小百合が自分のプロダクションで製作しようとした映画『野麦峠』が撮影開始直後に中止となった事件はいろいろ象徴的な出来事でした。
maricozy.hatenablog.jp