トラウマは元から絶たなきゃダメ!宇宙の果てでベトナム戦争が始まる?『エイリアン2』

基本情報

Aliens ★★★★
1986 ヴィスタサイズ 136分 @ブルーレイ

感想

■『エイリアン2』といえば、画像の粒状性が悪くて、ザラザラしているのがパブリック・イメージだったが、さすがにHDリマスター版はフィルムグレインが綺麗に除去されている。そもそも20世紀フォックスの映画ソフトは昔から色彩が浅く、フィルム・グレイン由来とは思われないザラザラした画質がその特徴で、本作や『ダイ・ハード』などのヒット作も例外ではなかったが、さすがに最近のブルーレイ画質はキレイになっている。

■監督自身はアナモフィックレンズが嫌いで、合成に支障が出るし、映像が歪むので本作では使う気がなかったそう。スーパー35方式(ネガの上下をマスクしてスコープサイズにするやつ!)による擬似シネスコ画面も検討されたが、まだ技術的に安定していないので、ヴィスタサイズ撮影になったという。しかも、監督自身が映画館で観ても粒状性が悪いのでびっくりしたという。それくらい、劇場公開当時はザラザラしたルックだったのだ。

■ちなみに、スーパー35方式のスコープサイズ上映は『トップガン』が初めてだったらしい。ジェームズ・キャメロンも後に『ターミネーター2』で採用してますね。

■おなじみのパインウッドスタジオで撮影したが、アメリカから乗り込んだ監督ジャームズ・キャメロンとプロデューサーでその嫁のゲイル・アン・ハードの若さに、スタジオ付きの映画職人たちが総スカン状態で、最初の第一助監督は反抗的で馘首されたそう。それにしても、監督は脚本も書けば、デザインもするし、特撮の撮影方針も決めるし、現場でビデオ撮影もするという多才ぶりで、実際天才的なのだ。エイリアン・クイーンは文楽パペット方式だと自分で言ってるからね。

■撮影はエイドリアン・ビドルだけど、最初は違うキャメラマンだったようで、監督と合わないので『エイリアン』にも参加し、リドリー・スコットの会社で働いていたための途中参加だったらしい。現場ではアベイラブルライト方式であまり照明を焚かないスタイルだったらしい。あの映像のザラつきはおそらくフィルムを増感したせいもあったのだろう。最新ソフトではすっかりピカピカに化粧直しされてますがね。

■この映画は何度観ても編集が秀逸なのだが、『2001年宇宙の旅』や『シャイニング』のレイ・ラブジョイも当初は監督の狙いがつかめずに苦労したらしい。後に完全版と称して未公開シーンを復元したバージョンが公開されたが、正直、未公開シーンは出来が悪い。惑星LV-426の探査シーンなどもセット感の狭さ丸出しだし、編集も明らかにルーズだ。リプリーの娘がすでに死亡しているエピソードも、ドラマ的には違和感しかない。スタジオのお偉方も、無駄飯食ってるわけではなくて、それなりに映画の要諦を掴んでいるわけだね。

© 1998-2024 まり☆こうじ