基本情報
シェラ・デ・コブレの幽霊 ★★★
1964 スタンダードサイズ 80分 @アマプラ
感想
■かねてから幻の最恐怪奇映画として伝説化していた本作がスルッとアマプラに登場ですよ。みんなびっくりしてますね。しかも、実にキレイなリマスター版で、多分ブルーレイで出ているのと同じ原版でしょうね。
■なんともわかりにくい映画で、それもそのはず、もともとはTVシリーズのパイロット版として製作されたが、不採用となり、その後撮り足して(?)テレフィーチャーサイズに拡張したという経緯らしい。首謀者のジョセフ・ステファーノは『アウター・リミッツ』を当てた人で、本作の製作、脚本、監督を兼任。スタッフも『アウター・リミッツ』のメンツを集めているので、撮影は『冷血』等で有名なコンラッド・ホールで、キャメラオペレーターは『ローズマリーの赤ちゃん』のウィリア厶・フレイカーという不似合いなほどの豪華版。実際、モノクロ撮影の美しさは絶品。
■しかしお話は相当混乱しているし、とにかく編集が無茶苦茶なので、観ていると確実に体調が悪くなる。たぶん自律神経を狂わせる。
■盲目の大富豪ヘンリーのもとに夜毎死んだはずの母親から電話がかかるので、建築家兼オカルトハンターのネルソン(マーチン・ランドー)に美人妻(ダイアン・ベイカー)から調査依頼がある。生き埋葬の強迫観念のあった母親の墓所で、美人妻は血を流す幽霊に襲われ、取り憑かれる。ネルソンは事件は、かつて調査した、シエラ・デ・コブレ伝道団でアメリカ人女教師が血を流す幽霊に殺された事件と関連があると睨むが。。。
■という話で、死者からの電話、生き埋葬の恐怖、幻覚剤を使った狂言幽霊と盛りだくさんの話を折り込み、さらにシエラ・デ・コブレの幽霊事件の真相、因果な母子の確執と、どこにお話の主眼があるのか掴みかねる。もともとTVシリーズ用の設定なので、オカルト趣味の建築家と現実家の家政婦が議論しながら事件の真相を探る展開らしいが、かなり無理がある気がする。そもそもシエラ・デ・コブレ伝道団の幽霊事件だけで単独のお話を作るのが筋だ。まあ、母子関係の歪さが恐怖の根源というテーマではあるのは理解できるが。
■ただ、部分的には非常にできが良くて、まずは低予算テレビ映画のはずなのに美術装置が妙に豪華で、さらにコンラッド・ホールのモノクロ撮影は明らかにヴァル・リュートンタッチを踏襲している。豊かな影が何よりも雄弁に怪異を物語る。編集はむちゃくちゃなのに、クレーンショットや移動ショットの官能性は見事。前半の墓所での怪異場面や建築家の家に問題の家政婦が訪れる場面とか、そこだけ観ると傑作なのだ。
■怪異描写に衒いのないジョセフ・ステファーノはメリハリ全開の恐怖演出で、確実に怖がらせる。音楽や音響効果も効果抜群。合成全般のクオリティも『アウター・リミッツ』譲りで、血を流す幽霊は、なんだかグロテスクな宇宙人みたいだ。一方で、編集は露骨に変で、カットがつながっていなかったり、何もない電柱を延々と写したり、人の出入りが飛んでいたり、お話になんの関係もないエピソードが残っていたり、素人レベルの異様さ。仮編集版か?というレベル。
■映像表現としては100点満点の部分がいくつかあるので必見ではあるが、観ると確実に自律神経が狂って体調不良に陥ると思うので、要注意。今日もまだ体調不良が残っている。。。