アウター・リミッツ S2「38世紀から来た兵士」「宇宙に散った白血球」「二次元からの闖入者」

■「38世紀から来た兵士」「宇宙に散った白血球」「二次元からの訪問者」の三本立て。

38世紀から来た兵士」Soldier

■長く戦争が続く未来世界からタイムスリップしてやってきた兵士とコミュニケーションをとろうとした言語学者が彼を自分の家庭に引き取るが。。。

■SF作家ハーラン・エリスンの脚本で、「ターミネーター」の元ネタと裁判で確定された1作。正直なところ、訴えるほうも大人気ない話だと思うが。実際、特によくできたエピソードでもないし、低予算だし、スタッフ的にもあまりやる気が感じられない。監督はガード・オズワルドだし、撮影のケネス・ピーチはやるときはやる人らしいけど、やる気がないと完全にダルな仕事をする人。本作は後者だと思う。まあ、低予算だし、やりようがなかったかもしれないけど。

人間性(愛)に目覚めて家族を救ったのか、兵士の本能(?)として条件反射的に敵を倒したのかと問いかけるナレーションが痺れる。でも、あれは完全に兵士として生まれついた男の反射神経だと思うけど。どう考えても「ガラスの手を持つ男」のほうが上出来だな。

「宇宙に散った白血球」Cold Hands, Warm Heart

■金星探検中に8分間の交信途絶を経て地球に帰還した男は、異常な寒気に襲われる。しかも血中の白血球が喪失していることが判明し。。。

ウィリアム・シャトナーが熱演するけど、やはりS2は低予算化が顕著で、S1のような豪華な実験室セットなどはないし、少々寂しい。宇宙で何者かに遭遇した飛行士が変貌してゆく、という定番のお話だけど、単に異常に寒がりになる(+手が変形する)というのはどうなのか。原題はカッコよくて、奥さんの愛で正気を取り戻すという、実際そんなお話なんだけど、なんだかなあ。

■宇宙船の船窓の向こうの虚無の空間からやってくる宇宙人(金星人らしい)のイメージがとにかく強烈に怖くて、宇宙空間なのに、霞の彼方から徐々に姿を表す表現が、妙に恐怖心を唆る。アウターリミッツのクリーチャーはホントにグロテスクで、人のかたちをしていても、人間味を感じさせないのが凄い。ウルトラマンウルトラセブンと戦えば、瞬殺されるに違いないけど。

■そもそも、何しに出てきたのか、宇宙飛行士に何をしたのかも不明なまま、宇宙探検の予算審議委員会を通過して予算がついてしまったけど、それはハッピーエンドなのか?また金星人(?)に精神汚染されるのではないか?

「二次元からの闖入者」Behold, Eck!

■他の次元から2次元生物エックがこの世界に迷い込む。特殊な隕石から作った眼鏡だけで彼の姿を見ることができたが、テレビに感電すると帯電体質となって可視化されると。。。

■お話の基本は『ET』で、エックと意思疎通して、彼は次元の裂け目から迷い込んで困惑していること、次元の裂け目を放置すれば時空の崩壊を招くことなどを知り、彼を故郷に帰そうと、光学科学者が親切心で奮闘する。エックに悪意はないし、3次元世界で怯えているからだ。目が見えないので、目の数を増やしてみたけど、それでもだめで、一個外した眼をサンプルに、科学者に特製レンズを作ってもらうことに。さいごに、レンズをもらって大喜びで部屋を出ようとしたら、エックは厚みがないので壁も素通りするけど、3次元物体であるレンズが引っかかって出られないというあたりも芸が細かい。

■エックという二次元生物がビルを真っ二つにする(予算の都合上写真だけで表現)怪獣映画でもあるが、エックの特撮表現がユニークで楽しく、特に帯電化したエックの合成表現など、実に見事で美しい。エックという異次元生物の、生命としての不思議に対する素朴な畏れと憧れと関心を基本として作られている点が、今見ても楽しい。われわれが心を動かされるのは、特撮スペクタクルではなく、不思議な存在に対する素朴な憧れであり、それは非常に単純な映像表現で形作ることができるのだ。

■そうそう、撮影はケネス・ピーチで、当たり外れの大きい人だけど、監督はバイロン・ハスキンで、かなり丁寧に撮っている。このシリーズでは時々バイロン・ハスキンが登場するけど、どれもレベルが高いので、やはりこの監督、腕とセンスが良いのだな。変人科学者とその優秀な女性助手(ジョーン・フリーマンの着こなしが素敵)が特製メガネをかけてエックを観察する、ありふれたカットなども妙に美しくて感心しました。

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