ダムは俺たち労働者の摩天楼だ!土建映画の小品佳作『摩天楼の男』

基本情報

摩天楼の男 ★★★
1960 スコープサイズ(モノクロ) 78分 @アマプラ
企画:浅田健三 脚本:星川清司熊井啓 撮影:山崎善弘 照明:森年男 美術:坂口武玄 音楽:松村禎三 監督:野村孝

感想

■雷神ダムの工事現場では既に三人の現場監督が事故死していた。全ては敵対する土建屋荒川組の妨害工作だが、新任の現場監督は証拠を掴むまではと鷹揚に構えている。そこに少年に化けた女性カメラマンが潜入し。。。

■という、非常に空想的なお話で、土建屋やヤクザの乱闘もあれば、ラブコメ要素もあるという、素敵なごった煮映画。当然実際のダム工事現場でロケしているから、見栄えは立派。でも、お話がしょぼいなあと思っていると、終盤にやっとやりたいことが見えてくる。

■お約束どおりヤクザに人質にとられた娘を救出するためたったひとりで敵陣に乗り込むと、レスラー崩れの無法者と一対一の肉弾戦を戦うことになる。この殺し屋を演じるのがユセフ・トルコで、かなりの大役。クライマックスの乱闘はフルショットの長回し主体なので、二谷英明もユセフ・トルコも、その真剣味が違う。後年の那須博之とか池田敏春を想起させる、堂々とした引きの画と水溜まりを使ったスペクタクルな殺し合いは見ごたえがある。というか、彼らのルーツは野村孝にあったのか。驚いた。二人を取り囲む労務者たちのモブシーンも凄い。今ならCG処理だね。

■そしてラストは、荒川組のヤクザたちを血祭りにあげようと熱り立つ数百人の労務者たちの前に立った二谷英明が、我々の勝負はこの仕事なんだ、この雷神の谷に摩天楼を立てるんだ!と工事現場に戻るように説得する場面。これもなかなか圧巻な演出で感動的。このあたりはやはり熊井啓の筆だろうか。そういえば東大出の野村孝は『未成年 続・キューポラのある街』を撮っているし、『夜霧のブルース』でも港湾労働者の労働争議を描いているから、実はそっち系の筋金入りなのかも?

労務者頭がガリガリ丹波哲郎で、声はでかいけど、まだ往年の貫禄がついていない。ラブコメ要素を担うのが清水まゆみで、確かに体つきは少年のようだが声が妙にハスキーなのが面白い。なぜかクレジットには名前がないのだが、建設会社の上司の妹役で中原早苗も出ていて、二谷に色目を使う。日活では日活パールラインとして、吉永小百合浅丘ルリ子芦川いづみらと並んでいたらしい。なんというか、同列なんだ。。。

■なお、本作はもともと赤木圭一郎の主演の総天然色映画として企画されていたもの。監督も古川卓巳の予定だった。
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