みんな終わりにしてやる!転向者の哀歌『野良猫ロック 暴走集団’71』

野良猫ロック 暴走集団'71 [DVD]

野良猫ロック 暴走集団'71 [DVD]

  • 発売日: 2012/04/03
  • メディア: DVD

基本情報

野良猫ロック 暴走集団’71 ★★☆
1971 スコープサイズ 87分 @アマプラ
製作:笹井英男、岩沢道夫、真下武雄 企画:佐々木志郎 脚本:永原秀一、浅井達也 撮影:萩原憲治 照明:大西美津男 美術:千葉和彦 音楽:玉木宏樹 監督:藤田敏八

感想

■ダイニチ映配体制の日活末期に集中的に製作された野良猫ロックシリーズ第5弾で最終作。最終作は、第一作と同じくホリ企画製作に戻っている。そしてこのシリーズの立役者は企画の佐々木志郎なんだね。でもこの人はATGとかアルゴプロジェクトで有名な佐々木史朗とは別人なんですよね。非常にややこしい。絶対混同する。混同してた。

■さて。新宿のフーテン族のリュウメイが喧嘩で男を殺すが、逮捕されたのは罪をかぶったその恋人フリコだった。リュウメイが地方町の町長である実家に無理やり連れ戻されたことを知った彼女は彼を追う。さらに行方をくらました彼女を追って、新宿に居場所を失った仲間のフーテン族もやってきて、町長の屋敷に幽閉されたフリコを取り戻そうとする。。。

■というお話で、サイケな出で立ちのフーテン集団が再開発工事中の野原が広がる殺風景な新宿をあとにして、ディスカバー・ジャパンよろしく田舎町にやってきて、空き家の別荘に住み着くが、当然町長や地元警察と対立し、最終的に西部劇のテーマパークでダイナマイトまで登場する派手な銃撃戦が始まる。

■もちろん、藤田敏八なので一筋縄ではいかなくて、謎の暴走集団が総統、ゲッペルスヒムラー、ヘス、ゲーリングという命名なのもふざけてます。単に悪ふざけです。しかも妙に配役が豪華で、郷鍈治は常連としても安岡力也、藤木孝らが揃う。

■逆に扱いが小さいのが梶芽衣子で、ほとんど町長の屋敷に幽閉されて活躍の場がない。一方で脈略なく通りすがりのモップスが登場し、唐突に堺正章がスナックで歌を披露するというのも、このシリーズらしい趣向。もともと日活名物の音楽映画、歌謡映画でもあるという生い立ちを最後まで貫く。

原田芳雄はお馴染みのGパンにドテラを羽織った、まさに原田芳雄スタイルの出で立ちで、さらに子どもを背負って右往左往するし、藤竜也は長髪、髭に丸いサングラスという典型的なヒッピーファッションで、ふざけ倒す。派手な銃撃や戦闘はあるけどヒロイックにはならない。藤田敏八だから。日活流ニューシネマだから。

■同じ藤田敏八の『ワイルド・ジャンボ』にも出てたけど、本作も主人公グループには夏夕介が出演している。もともとGSのオックスのメンバーでホリプロ所属だったので『ワイルド・ジャンボ』に起用されたという経緯らしい。特撮ファンには『突撃!ヒューマン』とか『宇宙鉄人キョーダイン』でお馴染みで、ドラマファンには『特捜最前線』の方が有名かも。だけど、映画デビューが野良猫ロックだったとは知らなかった。というか、GS出身だったのね。

■地方政治家の長男で血筋の良いリュウメイはヒッピーになったものの実家に連れ帰られ、暴力的に洗脳されて父の愛で跡を継ごぐことを覚悟するが、昔の仲間たちの登場で、その有望な前途も潰えてしまう。まあ、その前に喧嘩で殺人を犯しているので、自業自得という構図だが、可愛そうな男なのだ。リュウメイ、お前はどちら側の人間なんだ?と問われることになる。究極の選択というやつだけど、それがこの映画のテーマ。ただ、保守的な権力者に対するアンチテーゼとしてのヒッピーなる存在に、少なくとも映画内での普遍性が感じられないので、説得力には欠ける。それ故に単なる風俗劇に見えてしまうのだ。

野良猫ロック 暴走集団'71

野良猫ロック 暴走集団'71

  • メディア: Prime Video
www.nikkatsu.com


参考

こんなCDが出ていますね。これは楽しそうだなあ。ちょっと欲しいぞ。しかも、太田とも子って、梶芽衣子の妹だって!!

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