基本情報
1970 スコープサイズ 85分 @DVD
野良猫ロック ワイルド・ジャンボ ★★☆
製作:笹井英男 岩沢道夫 企画:佐々木志郎 原作:船知慧 脚本:永原秀一、藤田敏八 撮影:安藤庄平 照明:海野義雄 美術:斎藤嘉男 音楽:玉木宏樹 監督:藤田敏八
感想
■何をして暮らしているのか得体のしれないペリカンクラブの若者たち。掴みどころのない、目的なき日常の中で、校庭から旧日本軍の銃器を発掘したり、新興宗教のお布施を強奪するプランが持ち込まれてたりすると、緩やかな破滅が訪れ。。。
■というお話だけど、なにしろ藤田敏八のことだから普通の活劇映画にはならないし、アクションよりもペリカンクラブの若者たちの当て所のない日常の描き方の方に主眼がある。そもそも大塚和プロデユーサーのもとで、日活リアリズム路線で監督デビューしたはずなのに、この頃はすっかりリアリズムからは離れて、藤田敏八独特の浮遊感というか、世界観を模索している。「敏八ワールド」と呼んでも過言ではない。というかそう理解するしかないよね。
■伊豆下田海岸でロケした70年の夏の浜辺の風景が今となっては見どころで、実際やっていることは翌年の『八月の濡れた砂』とほとんど同じ。ある意味、本作は『八月の濡れた砂』の予行演習という感じだ。
■和田アキ子はバイクに乗った女風来坊として1シーンだけ登場、クラブでの歌唱シーンを強引に挿入しており、完全に特別出演(実際は第一作のカットの流用)。実質の主演は地井武男と藤竜也ということになる。しかも、この二人はどうも怪しい関係だ。藤竜也がテレビ映画で大活躍する以前の、髭ははやしているけどまだ若くて身体がツルッとしてパンパンに充実している感じが素直に眩しいね。地井武男はあくまで地井武男で、あのままだし。ギラギラして眩しい。
■梶芽衣子が本名の太田雅子から改名したのが69年で、徐々にブレイク中の70年。まだ準主役クラスだけど、どうみても魅力爆発なので、シリーズ第三作で主演に昇進するのも当然。実際のところ初期の太田雅子からここまでファッショナブルに変貌するとは誰も予想しなかっただろう。どう考えても映画に特別に祝福された女優だ。
■野良猫ロックシリーズは日活歌謡映画の系譜のなかで、舟木一夫や橋幸夫の歌謡映画、日活ヤング&フレッシュのGS歌謡映画に続くロック映画であり、ファッション映画でもある。范文雀のロングヘアとか巨大なサングラスとか、もう70年台ファッションの見本市としても楽しいけど、藤田敏八にはあまりそんな意識はなかったのかもしれない。そもそも何がしたい人なのか掴みどころがないのだ。
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