基本情報
花咲く乙女たち ★★★
1965 スコープサイズ 95分 @アマプラ
企画:笹井英男 原作:馬場当 脚本:堀内信男、鈴木通平 撮影:高村倉太郎 照明:河野愛三 美術:横尾嘉良 音楽:池田正義 監督:柳瀬観
感想
■看板に偽りありとはこのこと。舟木一夫主演の明朗な日活青春歌謡映画かと思いきや、実際の主役は山内賢が演じるチンピラやくざなのだ。
■ヤクザの親分に命じられて繊維工場で働く女工を堕落させて水商売に送り込むために愛知県尾西市(労務管理モデル都市!)にやってきたチンピラコンビが、定時制高校(お馴染みの!)で学ぶ女工や給食工場で働く若者と触れ合うなかで、若者としての生き方を見直してゆくというお話。この当時の日活映画には勤労映画路線があり、中心は大塚和による啓蒙的なリアリズム映画だったが、本作は本来舟木一夫主演の歌謡映画という企画。
■すでに吉村廉の『美しい十代』という小品があり、おなじようにチンピラヤクザの更生を描いているので、焼き直しに見えないここともないが、やくざ映画としては『美しい十代』の方が充実していた。なにしろ今平組の姫田チームが画作りを行っているので、不似合いなほど映像表現が充実していたからだ。
■一方、本作はチンピラヤクザを演じるのが山内賢と堺正章で、非常にコミカルに演じているので、ラストであんなことになろうとは予想もつかない。まあ、ヤクザの親分が金子信雄なので、とてもお気楽には済まないわけだが。
■チンピラ二人組みをもう少しシリアスに描けばもっと良くなる映画だが、要所要所に舟木一夫の歌を挿入する必要があるから、なかなか難しいバランスだ。
■柳瀬観という監督は不思議な人で、本気で演出すれば非常に優れた演技と映画的な見せ方を引き出せる人なのだが、流して撮る場面はホントに棒読みの台詞でもOKしてしまう。西尾三枝子がまさにそんな感じで、フルショットに引いた場面では表情も変化がないし、台詞は棒読みだし、なんだこりゃなんだけど、犬山公園のロケ場面なんて、実に傑作な名場面で圧巻なのだ。山内賢が西尾三枝子にツーレロ節を歌うよう強要するのだが、ここでは西尾三枝子がいやいや猥歌を口にする屈辱に半分泣きながら歌う表情が非常にリアルで、キャメラもちゃんと西尾のアップを追って動く。西尾の素晴らしい表情から目を離せないからだ。そして山内賢の「俺はお前らを堕落させるために来たんじゃい!」の台詞がとどめを刺す。
■組長に命じられて先に尾西市に潜入した先輩ヤクザが小池朝雄で、ヤクザの邪念をすっかりなくして、現地に完全に馴化して甘味店の主人に収まっている姿が可笑しくて、もっとこのユニークなキャラクターが生かされるのかとおもいきや、十分に生かされず、菅井一郎演じる地元の元ヤクザの親分から次はお前の番じゃなと言われて終わってしまう。ああ勿体ない。クライマックスで山内賢と組長の間で活躍すると思ったのに。。。
■あと印象に残るのが天坊準という役者で、組の幹部として山内賢らを監視に来たりするのだが、柔らかい口調で非常にいやらしく攻め立てる演技がリアルで怖い。いい役者だなあ。
■日活の啓蒙的な勤労者映画は大塚和と民藝路線が形成してきたが、流行歌手が登場する歌謡映画と合体してゆき、こちらの路線は笹井英男らが企画したようだ。そして笹井英男はホリプロに移り、百恵&友和映画を生み出すことになる。でもそこに柳瀬観は呼ばれなかったのだな。情感の演出に優れた、なかなかの逸材だったと思うのだが。
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