日活名物!これぞGS歌謡映画『夕陽が泣いている』

基本情報

夕日が泣いている ★★☆
1967 スコープサイズ(モノクロ) 87分 @アマプラ
企画:笹井英男 脚本:山崎厳 撮影:山崎善弘 照明:高島正博 美術:千葉和彦 音楽:林一 監督:森永健次郎

感想

■日活の若手俳優山内賢、和田浩次、杉山元、木下雅弘が、「日活ヤング&フレッシュ」あるいは「山内賢とヤング&フレッシュ」というバンド活動を1962年から行っていて、レコードも発売していたらしい。ちなみに杉山元は「ミラーマン」の気弱な眼鏡の理系青年、安田隊員でお馴染みですね。個人的には好きなんですよね、安田隊員。この時代の日活映画で脇役としていっぱい出てますね。なお、日活ヤング&フレッシュは、1966年3月の『青春・ア・ゴーゴー』がその映画主演第一作らしい。

■上京した山内賢らが偶然出会ってバンドを組み、憧れの名ギタリストの妹がマネージャーとなってザ・スパイダースの「夕日が泣いている」を共作するまでをセミ・ドキュメンタリータッチで描いたGS歌謡映画。彼らが憧れる名ギタリストを演じて名演奏を披露するのが横内章次という実際の音楽家で、俳優の横内正のお兄さんだそうです。というわけでもなかろうが、堂々と演じきるから大したもの。もちろん超絶技巧の演奏は本人による。

■その妹でアメリカ留学を目指す女子大生が和泉雅子で、もっともキュートな頃なので、モノクロ撮影の低予算映画とはいえ、スクリーン映えしますわ。当然ながら。監督の森永健次郎は大ベテランで当時の感覚としては初老のおじさん。何故かキャメラを無意味に動かすのが好きな人で、本作でもドキュメンタリータッチで即興的なキャメラワークを駆使していて、ビートルズ映画を意識したものだろうが、なかなかセンスが良くてビックリ。さすがにコンサート会場場面はカット割りが音楽性に追いついてませんが。

■それまで日活らしい勤労者青春映画の中にGS歌謡要素を強引にぶち込んでいたわけだが、ここに至って歌謡を聞かせることを主眼にしてドラマ性は後退、そこが映画としては物足りないところではある。同時期の東宝の若大将映画では、ドラマ性と音楽性、さらに海外ロケなどのスペクタクル性まで兼ね備えた豪勢な映画作りだったことに比べるといかにも小粒なのだ。

■本作では山内賢和泉雅子がデュエットを披露しますが、既に鍛冶昇監督が同年2月の『二人の銀座』でコンビの歌謡映画を撮っているんですね。こちらもまだ低予算のモノクロ作品ですが、このあとの同監督作で10月公開の『東京ナイト』はカラー映画に格上げ。どちらも楽曲が良いので、きっとアマゾンプライムビデオに入ることだろう。というか、是非お願いしたい!

■そしてこの年、彼らの脇で顔出ししていたザ・スパイダースがついに主演作を撮ることになるんですね。『ザ・スパイダースのゴーゴー・向う見ず作戦』がそれです。あ、これもアマゾン・プライムビデオに入ってる!

■ちなみに本作は、『恋人をさがそう』という西条輝彦主演の映画と二本立てで公開されてますが、監督はこちらも森永健次郎。いかにも日活凋落期らしい低予算作品のやりくりが続きますね。同年1月には日活映画の実質的な製作部門のトップだった江守常務が経営不振の責任を追求されて更迭されてますからね、製作規模の縮小は当然のことでありました。4月公開の『大巨獣ガッパ』がまがりなりにも大作仕様でいられたのは政府系の日本映画輸出振興協会の資金援助があったおかげでしょうね。
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