僕らの好きだった川崎敬三。今日もどこかでひとでなし!『閉店時間』

基本情報

閉店時間 ★★☆
1962 スコープサイズ 99分
原作:有吉佐和子 脚本:白坂依志夫 撮影:中川芳夫 照明:久保田行一 美術:間野重雄 音楽:中村八大 監督:井上梅次

感想

■デパートに勤務する高校の同級生だった三人娘のそれぞれの仕事と恋の行方が描かれるライトな風俗ドラマの小品。三人娘が、若尾文子野添ひとみの二人はいいとして、江波杏子が入っているのが異色。まだデビュー間もない頃なので、大抜擢という感じだなあ。

若尾文子がボランティアで盲人向けの朗読録音を行っているというのが当時らしい珍しい風俗で、その憧れの声優の師匠が大木実というのも珍味。実際、清潔感のある渋い男前を演じてハマっている。女性の社会進出を猛烈にアピールする、当時の意識高い系の女史を演じて、白坂脚本らしい早口の台詞が痛快。相方は川口浩だしね。

■そのなかでは江波杏子が異色で、派手好きで男出入りの多い発展家のギャルを演じる。見た目のまんまという配役だが、確かに違和感がない。しかも、ラストではバー勤務に鞍替えして黒い和服で登場すると既に女賭博師の風情なのだった。まだ二十歳そこそこなんですが。

■しかも、その恋愛の対象が気障で色男な広告マンの川崎敬三なのだから、恋の行く末は推して知るべし。まさにそのとおりの人でなしぶりを披露するから、川崎敬三ファンとしては快哉川崎敬三は単純な二枚目や気弱な二枚目も味があるが、こうした冷血漢、ひとでなしを演じると最高にハマる。森雅之なんかも同様の役を知的に演じるが、川崎敬三の方がもっと庶民的でユーモラスなので身近な小悪党って感じがして、ユニークな味なのだ。

■映画としてはいかにも軽妙な面白さだけど、アグファカラーの透明感ある紫の発色が綺麗で贅沢でうっとりするし、中村八大の主題歌も傑作なので音楽映画としても捨てがたい味があり、昭和30年代の活気ある夜のムードがひたすら羨ましい。

参考

今回は川崎敬三で括ってみましたよ。山本薩夫の『傷だらけの山河』も実に良い演技なんだけど、ちゃんと記事を書いていないなあ。👉書きました。
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