青虫&おじさんwith反日暴力女記者⇒土曜ドラマ『フェイクニュース』にみる社会派エンタメ作法

f:id:maricozy:20181111141056j:plain

基本情報

フェイクニュース ★★★☆
作:野木亜紀子 音楽:牛尾憲輔 プロデューサー:北野拓 演出:堀切園健太郎、佐々木善春
出演:北川景子光石研永山絢斗矢本悠馬、金子大地、新井浩文岩松了杉本哲太

感想

■なんだか馬車馬のように働いている野木亜紀子のオリジナル脚本で、いわゆる社会派サスペンス。カップ麺への青虫混入事件を発端として、素朴に出来事をネットに拡散したもの、それを利用してフェイクニュースをバラまいて、ある政治的意図を実現しようとするもの。彼らの意図とフェイクニュースのメカニズムをかなりリアルに探った力作。新聞社を左遷され、系列のネットニュースサイトでPV稼ぎの記事を書かされている女記者が主人公となって、左遷の原因となった厚労省幹部の不正疑惑事件との関連が浮上してくる。フェイクニュースという素材だけではなく、ヘイトクライム外国人労働者の問題も盛り込んで、非常に意欲的なドラマとなっている。
野木亜紀子の脚本って、実は『アイアムアヒーロー』しか知らないのだが、何故か骨太な活劇とかサスペンスが書ける人なのではという印象がある。その意味ではなんとなく那須真知子を想い出したりする。本作も後編では県知事選挙を巡る不正疑惑に主題がシフトしていき、外国人労働者の受け入れに関する県知事候補者の不正のメカニズムが明らかになる。その中で女主人公と元厚生労働省幹部との過去の軋轢が回想され、そいつが諸悪の根源かとおもいきやというツイストが用意されている。しかも、そのスクープがあろうことか・・・という結構大技の逆転劇が仕込まれており、やっぱり骨太な構成の妙で、ほんとに上手い。
■そこにヘイト団体と反ヘイト団体が乱入して小競り合いが発生するという展開も加わって、ますます熱気を帯びるが、さすがにこれは作り過ぎ、”ため”にする展開で、十分に消化できていないと感じた。映像的には派手になって面白いんだけど、少々作り過ぎ。
北川景子杉本哲太の特に終盤の皮肉がきいたエピソードなども大人のリアリティがあるし、よく書けているいっぽう、リアルで突き詰めるのか寓話でいくのかぶれている感じもあって、尻が座らない印象が残った。デリケートな素材故、仕方ないのかもしれないが。
■ちなみに、NHKの公式サイトによると、野木亜記子は以下のように記している。

NHK!社会派!現代社会に警鐘!」なんていうと難しいドラマのようですが、いうても青虫です。青虫と登場人物たちの悲喜こもごもを、軽い気持ちで観ていただけたら幸いです。

また、プロデューサーの北野拓は

社会的なテーマをエンターテイメント性豊かなドラマとしてお届けします。堅くて難しいイメージのNHK社会派ドラマが生まれ変わります。

と記しており、リアル方向に寄せすぎないという作風は明確に意図されたもの。あまりリアルに振ってしまうと重苦しくて若い人が見てくれないからね。
■ちなみに、プロデューサーの北野拓はもともと報道畑の人らしく、そういえば『ワンダーウォール』のプロデューサー、監督も報道畑だったはず。本作もプロデューサーからの提案は恋愛ものでという話だったけど、脚本家からもっとエッジのきいたものが書きたいと社会派に攻め込んでいるが、同様のことが『ワンダーウォール』でも起こっていて、あれも最初の提案は学生寮を舞台としたわいわい楽しいドラマという提案だったのを、渡辺あやが廃寮の話を提案したんだよね。いまNHKの中で何かそういうムーブメントが起こっているのか?謎のシンクロニシティに”何か”の胎動を感じる。