ひかりごけ
2009年 自由劇場 NHK教育
作■武田泰淳 装置■金森馨 照明■吉井澄雄 音楽■鎮守めぐみ 美術監修■土屋茂昭 演出■浅利慶太
出演■日下武史、中村匠、神保幸由、高橋征郎、松宮五郎、広瀬明雄、立岡晃
■劇団四季の代表作といわれる「ひかりごけ」を初めて観た。抽象的で斬新な舞台装置に驚いたが、これは53年前の初演から踏襲しているそうだ。80分程度という短さも幸いして、非常に濃密で洗練された演劇となっている。劇団四季のストレートプレイは、総じて非常に高水準なようだ。しかも、ハイビジョン収録で、撮影も美しいので、一層印象が良くなる。
■DVDの商品紹介によれば、以下の通りの記念碑的舞台のようです。
初演は1955年(昭和30年)7月。劇団四季創立から2年後のことです。ジャン・アヌイ・、ジャン・ジロドゥの作品だけを上演してきた劇団四季が、“実験劇場”と銘打って初めて上演した創作劇でもあります。
いまや国民的ミュージカル劇団として有名な劇団四季初の創作劇が、実は前衛的な本作『ひかりごけ』だったわけ。
■ところで、先日観た「マタンゴ」が本作を下敷きにしている、あるいは参考にしているのは確実だろう。「マタンゴ」の脚本家、木村武はもともと戦前の関西で新劇活動に従事していた人だから、映画よりも演劇の素養のほうが豊富なはずで、例えば「フランケンシュタイン対地底怪獣」が長谷川伸の「一本刀土俵入り」の茂兵衛(=フランケンシュタインの怪物)とお蔦(=水野久美)を下敷きにしているように、意識的にか無意識的にか、演劇の構図を特撮映画に持ち込んだ人なので、当然「ひかりごけ」は観ている(少なくとも知っていた)に違いない。
■人間を食べた人間には印(緑色の光)が現われるという設定は、まさに「マタンゴ」そのもの。「マタンゴ」ではもっと端的に”人でない存在”に変化する。「マタンゴ」の衝撃的なラストも、「ひかりごけ」のラストに照応しているじゃないか。