基本情報
空の大怪獣 ラドン ★★★☆
1956 スタンダードサイズ 82分 @DVD
原作:黒沼健 脚本:村田武雄、木村武 撮影:芦田勇 照明:森茂 美術:北辰雄 音楽:伊福部昭 特技監督:円谷英二 監督:本多猪四郎
感想
■今更ながら久しぶりに観ましたが、何年ぶりでしょう。本編の撮影が芦田勇という人で、非常にリアルな画作りを誠実に行っている印象。後に本多監督とは小泉一が名コンビとなるが、小泉キャメラマンはもう少しロマン寄りな、いい意味で明るく楽しい東宝映画らしい甘い作風だろう。特に、東宝特撮の絶頂期の超大作を担当したのでその印象が強い。本作はもっとリアル路線で、地下坑道の照明なども、当時の出始めのカラー映画としては異色なほど暗く撮っている。フィルムの感度が低くて、映らないとヤバいから、明るく疑似夜景的に撮りがちだった時代に、よくこれだけ絞って撮ったものだと感心する。なにげに凄い意欲作。
ちなみに、芦田勇は東宝での活躍期間は短く、1967年に西原義一監督の『狙う』というピンク映画の撮影を担当したらしい。何があったの?別人?
■そして有川貞昌のコメンタリーでやっと気づいたこと。ラストシーンの阿蘇山大噴火シーンでラドンのピアノ線が切れた事故は有名だけど、一瞬画面が白っぽく露光過多の状態になっている。これはネガの不調かと思いきや、そうではなくて、操演が事故ったのでいったんキャメラを止めようとしたけど、円谷監督がまだまだ、回せ回せと指示したため、改めて落とした回転を上げたため、露光がおかしくなったのだそう。実はそうした撮影現場でのリアルな出来事を伝えるドキュメントフィルムでもあったのだ。凄いね。当時の特撮は完全にドキュメンタリー映像なのだ。
■ちなみに、有川貞昌は基本的に監督としてチームをグイグイ引っ張るタイプではないので、監督としては定着しなかった。あくまで技術者タイプだった。むしろ会社側の人間(助監督)の中野昭慶が大陸生まれの大人(たいじん)で声がデカくて監督の器にハマったし、川北紘一は生粋の特撮っ子で、しかも押しも強かったので、思わぬ大成を遂げた(実際、あれほどメジャーになるとは当時誰も予想しなかった!)。
■この頃はまだ自衛隊をそれらしく描くのに抵抗があった時代で、なんとなく防衛隊としてボカシて描くので、なんだか警察の指示で動いているように見えてしまうのは残念だけど、火山研究者の砂川技師が阿蘇山にミサイルなんて打ち込むと噴火を起こして周辺に甚大な被害が出る、怪獣どころじゃないと、ちゃんと反論しているのが立派。ちゃんと言うべきことは言っているのだ。でも会議の結論は、すでに大都市で大きな被害が出ているんだから(田舎の被害くらい目をつぶれ)と、主流派に押し切られてしまう、実にリアルな社会劇。このあたりは木村武(馬淵(渕)薫)メソッドかなあ。
■ちなみに、西村警部役を小堀明男が演じるけど、当時は東宝のスターだった。というか『次郎長三国志』シリーズの主演で有名だった。そのはず。
■非常にリアル志向の客観描写の演出だけど、本多演出は「おとなしい」という世評及び社内評価は、実際にその通りだとも感じる。そのせいで、『妖星ゴラス』の準備段階で、田中友幸から監督を辞退してほしいと迫られる事件が起こる。当然、本多監督は衝撃を受けて、演出姿勢を見直すことになる。じっさい、製作規模は縮小しているのに、1965年前後の演出のほうが充実していると感じる。小泉一とのコンビの相性もあるだろうし、メロドラマ演出の熟練がもたらした円熟味だと思う。あなたには女性映画のほうが向いていると言われて、確かにそうかなあという思いもあったのではないか。『ガス人間第一号』の成功もあるし。実際『サンダ対ガイラ』て、ロマンス感が非常に良かったからね。


