MRS. MINIVER
1942 スタンダードサイズ 134分
BS2録画
■イギリスののんびりした郊外にも、ひたひたと押し寄せるドイツ軍の影を描き、戦っているのは戦場の兵士だけではなく、銃後の護りも大切であると訴えるプロパガンダ映画。しかし、監督が脂の乗ったウィリアム・ワイラーなので、見事なプロパガンダである。
■中盤まではさすがにやっつけ仕事かと思いきや、終盤に向けて見事な劇的昇華を遂げ、一気に感動の頂を上り切る。牧師のアジ演説から、キャメラが空爆で大穴の開いた教会の屋根へ振り上げられ、戦闘機の編隊飛行が現われ、”威風堂々”が盛り上がるラストは、名シーンといっていいだろう。グリア・ガーソンとテレサ・ライトが乗った自動車が空襲に遭遇する場面の意外な展開を見せる演出も見事で、車内の閉鎖空間とそこから見える空間だけでぞくぞくするサスペンスを生み出す。撃墜された戦闘機のミニチュア撮影も素晴らしい。撮影監督はジョセフ・ルッテンバーグだが、テレサ・ライトの最期をローアングルで捉え、逆光のなかに、まるでモノであるかのように写し出したカットはモノクロならではの効果が凄い。
■ドラマ的には、ラストの、ある意味で取ってつけたような教会のシーンの前の、園芸品評会のシーンが名場面で、ヘンリー・トラヴァース演じる老駅長が丹精込めて育てた薔薇が一等を受賞する場面は、非常に感動的だ。