女相続人 ★★★☆

THE HEIRESS
1949 スタンダードサイズ 115分
BS2録画

■「ローマの休日」や「ベン・ハー」などのハリウッド大作で著名なウィリアム・ワイラーは、人間心理のえげつなさを鮮烈に抉る心理劇の傑作を多数残しているが、これもワイラーのダークサイド全開の残酷なホームドラマ。しかし、その筆致は上流家庭を舞台としてあくまで優雅で、生理的な不快感を煽るといった60年代以降の映画とは格が違う、ハリウッド映画の至宝。

■主演のオリヴィア・デ・ハヴィランドが、父親(ラルフ・リチャードソン)が無くなった妻を美化するあまり軽蔑される平凡な娘という役を演じて、前半と後半で見事な対照を見せる。女優としては待ってましたという腕のなる役柄のはずだが、実際見事に演じて、ラストの父親からの独立、人間性の成長とも閉塞ともとれる残酷な幕切れを戦慄させる。彼女に言い寄るプータロー青年(トレヴァー・ハワード)の言動が本当に彼女の財産狙いなのか、実直な愛に基づくのかを明確にしないため、サスペンスと人間心理の複雑さを際立たせる。彼に裏切られた(少なくともそう信じた)彼女が、ラストで財産だけでなく、今度は愛まで欲しいというの?と極めつけの名台詞をはくのも、凄い。父親への復讐心で精神的に自立するものの、”羹に懲りて膾を吹く”の故事よろしく、猜疑心の塊りに変貌する悲惨な女の人生を、それでもそこに辛うじて輝かしい一面を掬い上げようとする大人の目線が、ワイラーの独壇場だ。


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