CARRIE
1951 スタンダードサイズ 122分
DVD
ウィリアム・ワイラーがセオドア・ドライサーの小説をメロドラマに仕立てた傑作。
ただし、肝心のヒロイン、キャリーの生き方はどう見ても間抜けで、ツッコミどころ満載。単なる思慮の足りない世間知らずの田舎娘としか思えないし、ラストに向けて急に思い立って舞台女優のオーディションに応募して、あっという間に主演女優に上り詰める展開は、単なる冗談としか思えない。
だが、こうしたバカな筋立てが、ヒロインに惚れこんであたら人生を台無しにするローレンス・オリヴィエ演じる初老の紳士に視点を移したときに、おとこの純情の極めて残酷な顛末がせり上がってきて、深い感動を呼び起こす。そういえば、このラストシーンは淀川長治か浜村淳か水野晴郎のトークで聞いたことがあるぞ。
バカな若い女に入れあげた挙句に、偶然の成り行きで業務上横領の罪を犯してこの世界に身の置き場を失う紳士の姿は、近松門左衛門の心中ものを思わせる展開だが、”恋愛”というものの持つ破壊的な高エネルギー性について男の側から、しかも若い男ではなく、分別も思慮もあるべき初老の男の人生を賭けた選択として描き出したところにユニークさがある。それに対する冷淡な正妻の容赦ない描き方にワイラーならではの毒が盛られている。