幸福のスイッチ ★★★

幸福のスイッチ
2006 ヴィスタサイズ 105分
DVD
脚本■安田真奈
撮影■中村夏葉 照明■平良昌才
美術■古谷美樹 音楽■原夕輝
監督■安田真奈

パナソニックのOL出身の女性監督による、地に足の着いた映画。ほとんどが和歌山県田辺市でロケされたご当地映画であり、低予算のデジタルビデオ映画である。しかし、脚本が地道によくできているのと、配役が粒揃いのおかげで、非常にいい映画になっている。

■監督が自分の身の丈に合った素材を背伸びせずに語った脚本は、脚本教室の教材になるような仕上がりで、そこに上野樹里が主演で加わることで、ヒロインの人間像にえも言われぬ可笑しみを加えている。上野樹里は基本的に全ての映画が素晴らしいのだが、本作でもその辺でうろうろしている素人娘をヒッ捕まえて初主演させたかのような、擦れたところのない、採れたての表情を提供しており、まったく凄い女優だと感心する。未だに初々しさを失わない上野樹里に負うところ大である。

■加えて、三姉妹の長女役の本上まなみがいい演技を示しているのも意外な発見で、映画史上数多い三姉妹映画としてもレベルが高い。パナソニックの店の宣伝映画臭さが気になる人は少なくないだろうが、そこは素直に愉しむべきだ。大型家電量販店では行き届かない顧客の生活(人生そのもの)に密着したネットワークを築くという狙いは、高齢化の進む昨今、もっと見直されるべきかもしれない。都会では気づかない日本の現実の一段面を着実にホームドラマ化していいるし、三姉妹映画としての華やかさも備えたウェルメイドな娯楽映画である。ある意味、お手本的な映画である。

■製作は東北新社東京テアトル関西テレビ放送、制作は東北新社クリエイツ。

© 1998-2024 まり☆こうじ