叫
2007 ヴィスタサイズ 104分
DVD
脚本■黒沢清
撮影■芦澤明子 照明■市川徳充
美術■安宅紀史 音楽■配島邦明
VFXプロデューサー■浅野秀二
監督■黒沢清
本来はJ-HORROR THEATERとして製作され、東宝系で配給されるはずの作品だが、「LOFT」ほどではないにしろ、物語があまりにアート系に寄ってしまったため、インディーズ系で公開されてしまった黒沢清の最新作。合理的に解決しそうな雰囲気を途中まで引きずりながら、最後の最後にやはり置いてきぼりをくらわす演出が痛快だ。「LOFT」でも顕著だった芦澤明子のキャメラの貢献が大きく、個々の場面をただボーっと眺めているだけで、映画から名状しがたい侵食を受けてゆく自分自身に気づくことができる。
黒沢組の役所広司は、もはや何を演じても瑕疵がありえない特別な存在として君臨しているし、葉月里緒菜は見事なはまり役を得ている。この配役は完璧である。
しかし、この映画のもっとも不可解な中心地点に屹立しているのは小西真奈美であり、その不自然な存在感はラストカットに直結している。葉月里緒菜と対照をなすこの小西真奈美が役所広司と絡むことで引き起こす違和感の質については、素直に凄いと思う。
邪推というか、妄想だが、これは黒沢清による「日本沈没」のリメイクなのかもしれない。日本は地殻変動やマントル対流の構造的変化によって海中に没するのではなく、すべての日本人が幽霊によって海水に引きずり込まれて絶命することによって、国土ではなく日本人じしんが消滅してしまうのだ。