恐怖の精神病院 ★★★

黒沢 清監督 推薦 恐怖の精神病院 [DVD]

黒沢 清監督 推薦 恐怖の精神病院 [DVD]

  • 発売日: 2010/09/24
  • メディア: DVD

BEDLAM
1946 スタンダードサイズ 80分
DVD

■18世紀後半のロンドンの精神病院を舞台に、権力者に取り入って栄達を図ることにしか興味の無い院長が、患者たちの反抗にあって滅び去るまでを描く、怪奇映画ではなく、一種の社会派歴史劇。幽霊も怪物も登場せず、超常現象は起こらない。要は「カッコーの巣の上で」の原点である。
■「死体を売る男」は医学の発達の陰で支えた悪党の秘史を描き、ここでは精神病院の改革を描く、ヴァル・リュートンは、怪奇映画のシリーズにどんな思いを込めようとしたのか。本作は、精神病院を扱っているが、ゲテモノでも際物でもなく、演出のタッチも普通の文芸ものような洒脱なものだ。それでも、精神病院に幽閉される患者たちが院長を裁判にかけるあたりのクライマックスはメリハリのきいたリュートン・タッチが堪能できる。
■たった80分弱しかないのに、登場人物の設定とか、院長の末路とか、その隠蔽の仕方とか、相当に捻くれた、否、頭を使った脚本で、なかなか一筋縄ではいかない映画だ。真面目に観れば、かなりの深読みがきく映画だ。

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