2番目のキス ★★★☆

FEVER PITCH
2005 スコープサイズ103分
DVD


ボストンレッドソックスの熱狂的なファン(ジミー・ファロン)はエリートビジネスウーマン(ドリュー・バリモア)と知りあい、互いに惹かれあうが、野球シーズンの開始とともに、ゲームを優先する彼と仕事に追われる彼女の間には溝が生まれ・・・

 「2番目のキス」というやる気のない邦題で損をし、公開スクリーン数も少なかったファレリー兄弟の監督最新作。今回は身障者ネタは封印し、プロデューサーも務めるドリュー・バリモアをチャーミングに撮り上げることに専念している。無理やりギャグを詰め込む映画ではなく、あくまで緩やかなラブコメを目指しながら、野球ファンに仮託してヲタクの恋愛をスケッチ風のタッチで描き上げる。その手際はウッディ・アレンを思わせもする。といったら言い過ぎか。しかし、既存の楽曲の使い方の巧さは日本映画ではなかなか真似できない芸だ。「ふたりにクギづけ」の巧さにも感心したが、今回の肩の力を抜いて、野球好きとしての幸福感に身をゆだねたような清々しいタッチも悪くない。笑いから毒が抜けたと嘆くよりも、ファレリー兄弟の芸風の広さを堪能すべき映画だ。

 なにしろドリュー・バリモアの可愛らしさを引き出したのはお手柄で、近年の映画では最もチャーミングに撮られている。何しろ、「歪んだ口元もチャーミングだ」とジミー・ファロンに言わせているのだから、プロデューサー権限は偉大だ。

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