リンガー 替え玉★選手権 ★★★

THE RINGER
2005 スコープサイズ 95分
DVD

■ひょんなことから急に大金が必要になった主人公(ジョニー・ノックスヴィル)はろくでなしの叔父(ブライアン・コックス)のアイディアで、知的障がい者スペシャル・オリンピックに障がい者を装って参加してチャンピオンに勝利するという賭博を持ちかける・・・

ファレリー兄弟の製作で、バリー・W・ブラウスタインが監督にあたったコメディ。最近ファレリー兄弟の初期の毒気は薄れてきており、ある意味では日本人でも理解しやすいつくりになっている。ということは、世界中で誰が見ても理解しやすく、誤解が生じにくいということであり、ファレリー兄弟が何を目的としてこうした障がい者を準主役に据えたコメディ映画を作り続けているかが明確になるということである。日本では生真面目な教育映画にしかならないテーマをアメリカではコメディとして扱うことができるということである。アメリカのコメディ映画の持つ強靭な批評的精神は、日本映画でも見習いたいところであるが、これはミュージカル映画を真似するのと同様に未だに難題となっている。というか、こうした芸当はアメリカという国の成り立ちや国民の思想に関する部分が大きいので、実質的にアメリカ映画の専売特許なのだろう。イギリス映画ではもっと捻くれた表現になるだろうし。

■本作はファレリー兄弟が監督した「ふたりにクギづけ」などに比べると笑いも穏やかで、ブラックな笑いという雰囲気ではない。むしろ、「裸の大将放浪記」に近い身障者像といえるだろう。この問題をもう少しリアルに考えれば、山田洋次の「学校2」になるのだが、本作で活躍する知的障がい者たちは、なにしろスペシャル・オリンピックに参加できるのだから比較的障がいが軽いと考えるべきなのだろう。我々が日常的に目にする知的障がい者と呼ばれる彼や彼女たちを省みれば、そんな気の利いた台詞は到底ありえないし、楽天的に過ぎるという気がするのだ。

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