オール・ザ・キングスメン ★★★

ALL THE KING'S MEN
2007 ヴィスタサイズ128分
TOHOシネマズ二条(PS)


 貧困層の代表として地方政治に進出した州知事ショーン・ペン)は既存勢力からの弾劾を乗り切るため、影響力の強い元検事(アンソニー・ホプキンス)の弱みの探るよう、腹心の元記者(ジュード・ロウ)に命じるが、元検事は彼の育ての父親だった・・・
 地方政治に進出して堕落してゆく男の姿を、親友の元新聞記者の視点から描き出すのかと思いきや、むしろカリスマ政治家に関わったおかげで自分の大切にしていたものが悉く崩れ去ってしまう元記者の悲劇がドラマの焦点になっている。ところが、映画は最終的に彼が狂言回しにしか過ぎないような終わりかたをしてしまうせいで、焦点がボケてしまい、ドラマ的訴求力を失ってしまった。監督と脚本を兼ねたのはスティーブン・ザイリアンなので、どうにも彼らしくない不手際と感じられる。何らかの内部事情があったのではないか。
 ジュード・ロウは「ホリデイ」よりも美しく、ファンには堪能できる演技だが、映画のなかでの位置づけが揺れてしまうせいで割を食っている。ショーン・ペンはカリスマ性を秘めた野心的な政治家を清濁併せ呑む怪物としてアクの強い演技で演じ、圧巻だが、演説シーンなど演出的にはクサイ部分が鼻につく。
 allcinema on lineでは、旧作について「政界浄化を唱え知事選にうって出た小役人が、二度の落選で理想主義を地にまみれさせ、俗物に堕ちて行く様を、初めは彼に共感し取材を始めた記者の視点から描く。やがて、汚い手口で知事になった役人は、彼に反対する人達を力で封じ込める独裁者になっていた。大変な愛妻家でもあった彼だが、やがて平気で妻を裏切る様になり、献身的に務める秘書をまで毒牙に掛けようとする……」と梗概が書かれているので、確かにそうした物語であれば納得しやすいわけだが、今回は記者側のドラマに着目して再構成したということだろうか。それにしても、妙にピントがずれているのだ。

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