STUCK ON YOU
2003 スコープサイズ 119分
DVD
双子の兄弟ウォルト&ボブは、互いの腰がくっついた結合双生児だが、故郷で息のあったコンビ(?)でハンバーガー店を経営していた。だが、役者を夢見るウォルトはハリウッドへ行きたいと明かし、ボブも3年来のメル友が住むことから同意する。こうしてハリウッドでの奇妙な職探しが始まるが・・・
これまでの映画ではファレリー兄弟の目指すものが単なる露悪趣味なのか、ギャグのセンスが悪いのか判然としなかったのだが、この映画を観るとその意図がストレートに表現されている。予想を裏切る、正攻法によくできた映画で、ついつい感動させられる。コメディ映画としても、ギャグ優先の作劇ではなく、今回はドラマに奉仕する立場に従えて成功している。しかし、個々のギャグのレベルは秀逸で、決してギャグにも手抜きは無い。
マット・デイモンとグレッグ・キニアが結合性双生児を演じるという、黒い笑いを狙ったように思われがちな発想を、兄弟愛として描き出す姿勢には、兄弟監督としてのファレリー兄弟の自画像が素直に投影されているだろうし、そのことが映画を地に足のついたものにしていて、素直に心動かされる。ラストの公演場面なども、短いなかでミュージカルの楽しみをグレッグ・キニアが演じて(唄って)いるのもアメリカ映画ならではの贅沢さだ。日本ではあまり有名でなないと思うが、グレッグ・キニアという役者、非常に幅広い芸風の器用な男なのだ。
ウォルトを利用して気乗りしないテレビ番組を潰そうとたくらむシェール(本人役)も思い切った配役だし、メリル・ストリープ(本人役)もよく出たものだ。
障害者を描いた映画は、作る側も観る側も硬直してしまいがちだが、こうしたデリケートなテーマをコメディとして乾いた笑いに転化して描き出すことのできる点は、アメリカ映画の強みだろうし、理性の証明だろう。山田洋次の「学校Ⅱ」はリアルな視点からそれを試み、プライベートな日常の人間関係の中に普通に障害者との付き合いを持つファレリー兄弟はコメディ映画に仕立てて見せたが、ラストシーンが観客にもたらす感情も好対照を成している点が、興味深い。