I WALKED WITH A ZOMBIE ★★★★

I WALKED WITH A ZOMBIE
1943 スタンダードサイズ68分
輸入DVD


 輸入DVDで久々に再見したが、フィルムの傷が多く、特にDVD用に修復されたわけではないようだ。ロジャー・コーマンのポー物のDVDなど異様にピカピカのデジタルマスターが使用されているが、ヴァル・リュートン物はそこまで手をかけてもらえないのか?

 撮影監督は高名なニコラス・ムスラカではなく、 J・ロイ・ハントだが、リュートンタッチは健在で、怪奇映画的叙情のモノクロ映画における表現としては精華といえる素晴らしさ。

 ゾンビと化したかつての美女を巡る歪んだ三角関係(実は四角関係?)が浮かび上がるゴシックなメロドラマとしても出色で、短い上映時間のなかで、メロドラマの叙情と怪奇で幻想的な雰囲気が美的に結合して、怪奇映画好きには堪えられないご馳走映画と化している。

 特にこの作品は音楽の使い方が絶妙で、陽気なカリビアンな楽曲が呪われた恋愛模様を解き明かしつつ、島を支配する古い白人一家に対する呪いともなっている重層的な表現が、陽光輝く島を包む明るい闇の存在を暴きだす仕掛けとなっており、極めて技巧的だ。

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