キング・コング★★★☆

KING KONG
2005 スコープサイズ 188分
TOHOシネマズ二条(SC9)

キング・コング 通常版 [DVD]
 ピーター・ジャクソンが偏愛するオリジナルのキングコングを忠実にリメイクした怪獣映画の超大作。意外なほどオリジナルに忠実で、偏愛の程が察せられる。
 とにかくどこがミニチュアで、どこがマット画、どこがCGか、ほとんど判別不能という作りこみのものすごさは圧巻。特に髑髏島の密林の造形は、オリジナルのモノクロならではの鬱蒼とした陰影の幻想性を忠実にカラー映像に写し取っており、髑髏島の情景を見るだけで1800円の値打ちがあるというものだ。ところどころにデジタル映像ならではの計算されつくした自然描写の人工美に感嘆せざるを得ない場面があり、嘆息が漏れる。
 そのかわり、3時間の大作にしてはドラマ性には乏しく、ディテールの設定を緻密にすることでオリジナルを現代風脚本にアレンジする方向(例えば「ガメラ 大怪獣空中決戦)かと思いきや、オリジナル並のおおらかな作劇のままで、むしろクライマックスなどは極力せりふを排除してサイレント映画に接近しているようにさえ思えるほどだ。台詞による説明よりも、映像そのものに描きこんだアクションと情動をストレートに体感することを求められているようだ。
 そこで気になったのは、髑髏島の城壁を破って人間界へ暴れこんだコングが村落を蹂躙して、原住民を虐殺するオリジナルの重要な場面がオミットされていることと、オリジナルにもなかった輸送場面がやはり描かれなかったことだ。特に前者は、怪獣映画への訣別という意図なのだろうが、寂しいことだ。キングコングは怪獣映画の元祖のはずではなかったのか。


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