『コンセント』

基本情報

コンセント
2001/VV
(2003/2/8 レンタルV)
原作/田中ランディ 脚本/奥寺佐渡
撮影/上野彰吾 照明/小野 晃
美術/稲垣尚夫 音楽/大友良英
ビジュアルエフェクト/松本 肇,杉木信章 操演/鳴海 聡
監督/中原 俊

感想(旧HPより転載)

 自閉気味の兄(木下ほうか)がアパートで餓死したことから妹(市川実和子)は兄の幻覚と不思議な幻臭を意識するようになり、大学での恩師(芥正彦)のカウンセリングを受けるようになる。だが、大学の心理学教室の同級生(つみきみほ)と再会し、彼女の話からある種の特殊な能力を開花しつつあることを知る。それと同時に兄の残した”コンセント”の意味が徐々に明らかに・・・

 と書いてしまうとちょっとネタをばらしすぎた気もするのだが、身も蓋も無いことを言ってしまうと日本版「ギフト」である。タイトルと宣伝材料だけではどんな映画なのか全く見当がつかないのは困ったものだと思うが、心理学や文化人類学に興味のある方は必見と言っておこう。奇を衒った風俗劇かと思いきや、扱う素材は特殊なものの、意外にもオーソドックスな作劇による佳作である。さすがは、中原俊である。

 中原俊の映画を見るのは実に「櫻の園」以来だが、にっかつ時代の「初夜の海」は傑作だったし、ちょっと落ちるけど「猫のように」も忘れがたい。この映画ではルーカスと同じHD24Pで撮影したらしいが、ビデオで観る限りはフィルムとの違いは全く判らない。

 木下ほうかの亡霊が宙を漂っていると、怖いというよりも、鬱陶しくて嫌な感じはするだろうな、ということで、前半のホラー映画的な演出はあまり冴えないが、コンセントの意味について精神病理学的な意味づけと性的な隠喩は十分に興味深い。

 つまり、これは市川実和子が脱ぎまくり、喘ぎまくるロマンポルノでもあるのだが、むしろ却ってありがた迷惑というものだ。

 つみきみほはひたすら懐かしいのだが、大学での恩師を演じる芥正彦は下手すぎて明らかにミスキャスト。そのかわり後半を引き締める精神科医小市慢太郎はおそらく小劇場の役者だろうが、口跡が素晴らしく、何故か大阪弁の台詞の説得力とリアリティが抜群。

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