『貸間あり』

基本情報

貸間あり
1959/スコープサイズ
(2001/6/12 BS2録画)
原作/井伏鱒二 脚本/川島雄三藤本義一
撮影/岡崎宏三 照明/下村一夫
美術/小島基司 音楽/真鍋理一郎
監督/川島雄三

感想(旧HPより転載)

 大阪の通天閣が遠望できる丘の上に建つアパート屋敷とよばれる古屋敷には世にも奇妙な人々が集まり棲んでいた。その中には様々な雑多な才能を持ちながら自称”ゲテモノ趣味”ゆえに世間に認められないライター(フランキー堺)もいた。ある日訪ねてきた胡散臭い受験生(小沢昭一)に替え玉受験を頼まれたり、年増の陶芸作家(淡島千景)のアプローチから逃げ回ったりしながら彼を中心としてアパートの住人たちのけったいな姿を雑然と描き出した川島雄三の代表作だが、今回で2度目の鑑賞でもやはり、よくわからない。

 「暖簾」「青べか物語」「しとやかな獣」といった諸作品や文句無しの傑作「州崎パラダイス・赤信号」と比べると、この作品や「幕末太陽伝」がまるでしっくりとこないのは何故だろう?この登場人物たちの交通整理すら的確になされていない雑然とした非リズム感、敢えてそれを狙った脚色と演出の企みがどんなところにあるのか推量しかねるというのが素直な感想だ。

 デタラメな受験生を怪演する小沢昭一がおもしろいのかどうか、いつもながらのしぶちんおばさん役の浪速千栄子も特に生彩があるわけでもなく、山茶花究、沢村いき雄、加藤春哉等々の脇役陣もだからどうしたという役柄で困ってしまう。生命保険屋の益田喜頓がグロテスクな役柄で地味ながら健闘しているのが珍しい。

 通天閣を遠望するアパートのロケーションが秀逸で、重量感のある美術装置も宝塚映画の技術力の確かさを物語っており、宝塚映画のフィルモグラフィーの中では貴重な映画にはちがいないが・・・ 

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